1月

住人

この世の中の大半のものは、手に入れた時が一番輝いている状態で、使い込めば使い込むほど、あるいは年数がたてば経つほど劣化していく。

けれど、鉄フライパンは数少ない例外なんだ!

そう、彼は口角を上げながら語る。

彼は鉄フライパンに恋をしていた。

鉄フライパンは使えば使い込むほど、時間が経てば経つほどに愛しくなり、より進化していくらしい。

それが、それこそが鉄フライパンに恋をする理由らしい。使えば使うほど、好きになるんだそうだ。

初めは、あれ、と思ったこともあったそうだ。だけど、知れば知るほど、愛しくなるんだそうだ。

なんて素敵なんだろう。私は相槌を打った。

理想的な人間関係ってなんだろう。

不意に、数日後彼とその話題をすることがあった。

鉄フライパンみたいな関係性じゃないかな。

彼は言った。

彼は今日も共用のキッチンで、鉄フライパンで料理をしている。

美味しそうな匂いがしてきた。

食べたばっかだけど、料理しよう。

忍田 広昌

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