螺旋

住人

入り口付近に、立体有機ELパネルで作られた地球が、私たちの前に颯爽と佇んでいる。

ラップ調で地球の歴史を矢継ぎ早に紹介してくれるガイド音声とともに、その地球は色味を変える。

下に柱がついていない螺旋のスロープがその地球を巻くように伸びており、私たちはそこに登った。

集団で来ていた子どもたちが走って私たちの前を通り抜ける。

螺旋のスロープは揺れる。

みしみしと揺れた。

え。こんなに揺れるものなの。

大丈夫なのか。

このままこのスロープが崩れ落ちるのではないか、そして明日の新聞の一面を飾るのではないか。

私たちの未来が未来館で消えました、なんて皮肉なことになるのではないか。

そんなことを一瞬考えた。

そんなことにはもちろんならなかった。

閉館間際、お手洗いで水を流すのとともに、頭上のスピーカーから近未来的な「蛍の光」が流れた。

さすが、未来館。近所のスーパーの「蛍の光」とは何かが違った。

私はこの時、ここ日本科学未来館の展示物を見てきて、勝手に遠く先の未来まで知った気になっていた。つまり、浮ついていた。

お手洗いを出ると、カップルが芸能人のスキャンダルの話をしていた。

ああ、ここは今だった。

どんなに来来が不安でも、結局のところ今を懸命に生きていくしか道はないのかな、なんてどっかの自己啓発本にのっていそうなことを考えた。

忍田 広昌

言葉選びは軽やかなのに、根底にはしっかりとメッセージが流れている、そんな文が好きです。

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