p.2:モラトリアムの限界と私の居場所
人生はどうやら、選択の連続らしい。
だけど私は、選択することが苦手だ。
だからずっと、敷かれたレールの上を歩いてきた。わざわざレールを外れて新しい選択をするのが、「面倒」だったんだろう。
そんな私が、2年前に初めてレールを外れた。
大学生活4年目に留年して、5年目に就職活動をしなかったのだ。理由を隠さず言うのであれば、マルチタスクができなかった。それだけだ。何かを同時に進めようとすると、どちらも疎かになる。「とりあえず就活を終わらせる」とか、「とりあえず卒論を出す」とか。うまく手を抜く、ということが私にはできなかった。
こうしてあの頃の私は、図らずしてレールを外れてしまい、図らずして選択を先延ばしにした。
しかしモラトリアムの限界は差し迫っていた。5年かけて大学を卒業することができたけれど、就活をしなかったからとりあえず地元に戻ることになる。
「この先どうするの?」
「就職先決まってないってやばくない?」
当たり前だが、親や友達、後輩にも将来のことを案じられた。
地方の国立大学を出て、就職先が決まっていない人なんてなかなかいない。ましてや私は、何か夢を追いかけようとして就活をしなかったわけでもない。胸を張れる理由なんて何もなかった。ただただ、ゆっくり考える時間が欲しかった。
今の私はすごくない。
将来のことを決めるのが怖くて、先に進めないだけだ。
でももっと怖いのは、何もしないまま時間だけが過ぎていくことだ。このままでは、どんどん腐っていく。
そう思った私はやっと、「選択」と向き合うことになる。
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私は、何になりたいのか。大切にしたいことは何か。
ぼんやりと、文章を書きたいと思った。何かを伝えたいと思った。私を大切にしてくれる人たちと働きたいと思った。はっきりとした軸なんてものはなかった。ただぼんやりと「文章で何かを伝えたい」と思ったから、出版・広告業界で気になる企業を探した。
東京と長野の往復を繰り返し、東京のとある会社から内定をいただいた。
そして私はここで、立ち止まってしまった。
「私なんかに内定を出す会社は大丈夫なんだろうか」
不当に評価された気がしたのだ。だって、だって。私はすごくなんかない。要領が悪くて1年留年して、就活もせずに卒業して、何か魅力的なスペックがあるわけでもない。こんな私が評価されるなんて、おかしい。
就職活動では、ありのままの自分を100%見せるのは難しいことだと思う。「私はマルチタスクができないし遅刻癖があるし、傷つきやすくて心が弱くて会社に行けなくなるかもしれません。」なんて言ったら、どこの会社が採用してくれるんだろう。
人前で話すことは苦手ではなかった。第一印象は、どちらかといえばいいほうだと思う。だから、人当たりのよさでなんとなく採用されたのではないか。
ちょっと卑屈すぎるし考えすぎだと笑われるかもしれない。でも一か月前の私は本気でそう思っていた。
そこは出版社ではないけれど、広報物を作る会社だった。社員ひとりひとりがそれぞれの広報物を担当し、いわゆる「プロジェクトリーダー」を務める。文章を書くことができて多くの「すごい人」と交差できる会社。決して簡単な仕事ではないと思った。
だからこそ、悩んだ。
東京でやっていけるのか。
この会社でやっていけるのか。
すごい人がやるようなすごい仕事を、私がやれるのか。
私は決断することが怖かった。
難しい道を選んで、失敗することが怖かった。
東京で、居場所がなくなるのが怖かった。
ひとりぼっちになるのが怖かった。
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面接官の先輩や社長に、採用の理由を聞いたりもした。私のどこに惹かれたのか、なんてちょっと面倒くさい恋人みたいなことも聞いた。私と真摯に向き合ってくれている感じがしたし、それでいてちゃんと評価してくれていることも少しずつ認識していった。
それでも、どうにもこうにも決断できなかった。
できるかもしれない
と
わたしにはできない
が
頭の中でぐるぐる。
ずっと長野で生きてきた。だから東京へ出るのもハードルが高かったし、ハードルの高い東京で「すごそうな仕事」をするのもまた、ハードルが高かった。
だけど、思い出した。
私には、自分で決めた目標がある。
すごい人になりたい。
たくさんの人の人生と交差したい。すごい人のすごいところを、吸収したい。
この会社で働くのは、簡単なことではないかもしれない。東京は、情報がたくさんあるし人も多い。長野より難しい場所かもしれない。もちろん、東京に出るのがすごくて、長野にいるのがすごくないという訳ではないけれど。
だけど。
今より難しい場所へ行くのは、たくさんの人と交差するのは、今の私に必要なことなんじゃないか。長野を離れたって、大切な人たちにはすぐ会えるんじゃないか。東京に行ったって、私はひとりぼっちにはならないんじゃないか。
不安なことは山積みでも、でも私はすごい人になりたい。
やっと決心がついた。
私は、東京へ行く。
6月の終わりに、会社に連絡をした。
「内定をお受けします。よろしくお願い致します。」
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話は一瞬変わるが、2日前に24歳になった。
学生時代は日付が変わると同時に来ていたお祝いメッセージも、年齢と共に減っていく。これが大人になるということか。寂しい。
だけど、私には誕生日を祝ってくれる人が何人もいた。しばらく会っていなくても必ずメッセージをくれる親友たち、誕生日当日に会ってくれた1ヶ月前に仲良くなったばかりの友達、飲み会中に動画でメッセージを送ってくれたサークルの後輩たち、私のバイト先までわざわざ来てプレゼントを届けてくれた後輩、ぐだぐだのサプライズでお祝いしてくれた恋人。
もう歳を重ねるのはそんなに嬉しいことじゃないけど、たった一度しかないこの特別な日に祝ってくれる人がいる、私を思い出してくれる人がいる、その事実が、何年経ってもどこにいても私を支えてくれるような気がした。
今は不安ばかりだ。
生まれ育ったこの場所を離れて、新しいところでもちゃんと居場所ができるのかな。
初めて社会人になるけど、やっていけるかな。
また挫折するかもしれない。
今のところ、社会人に向いている要素が見当たらない。全然すごくもない。
でもとりあえずやってみよう。話はそれからだ。
うまくいかなくても、挫折しても、向いてなくても。誰かの頭の片隅に、私の居場所はある。きっと大丈夫。
だから、私。東京へ行きます。
うめこさん
遅くなってしまってすみません、
おどりばのちいです。
お誕生日おめでとうございました!!!
当日に言うことができずごめんなさい♂️
東京へ行くと言うことで、大きく環境が変わるのは
不安も多いかと思いますが、
うめこさんにとって何かいいことがあったらいいです。
大きなものでなくても、うめこさんにとっての。
陰ながらこれからも応援しています!!!
改めて自分も頑張ろうと思いました。
私も頑張ります。!!!☺️
ちいさん、コメントありがとうございます!コメントきてとてもうれしかったのですが、梅雨に心をやられておどりばの下の階段のとこらへんにいました。笑
ありがとうございます。
時間が経つにつれて本当にこれでよかったのか、、、?と不安が膨らみまくってますが、頑張りたいと思います!
ちいさんにもいつかお会いする機会があればいいなぁ、、、
うめこさん、いってらっしゃい。
うめこさんの決心を心から応援します。
きっと、大丈夫!
でも疲れたら、
長野に戻ってゆっくりして、
そしてきっとまた東京で頑張っていけます!
頑張れ、うめこさん!
しえさん!ありがとう!!!
すきですー!!!
休み休み頑張ります!
といいつつ、いまはフルスロットルぎみなのでどこかでクールダウンしないと、とおもっています。
こんばんは~
来年は東京だったんですね。
内定は企業が学生の未来を買ってると私は思います。新人からうちの会社でプロになってほしいと思い採用していると、
ですから、企業のサポートが入るはずです、企業は仕事で分からないことは教えてくれるはずですし、働くことで実力が付くはずです。
説教くさくなってしまいました、新しい門出おめでとうございます、って来年ですね^^;
ニルンさん
わざわざコメントありがとうございます!入社は春からではありますが、いまからこつこつと準備を頑張ります!
お久しぶりです!
すごくすごく共感しました。
私もなんだかこんな感じで常に悩んでいて、振り返って後進してちょっと前向いての繰り返しをしてます。
大学4年生この時期にして就活もなあなあな状態です。
うめこさんの記事を読んでハッとさせられました。
自分の目標に改めて気付けること、とても大切ですね。
東京、目標を実現するのにもってこいの場所ですね。
うめこさんが東京で今よりもっと輝いているのを想像して、私も頑張りたいと思います( ´ ▽ ` )!
うめこさんも頑張ってください!
うわあああああといちゃんだ!
読んでくれてありがとう!
そっかそっか、もうそんな時期か。
2年も時空をゆがめている私からすれば、いろいろ迷うことがあるなら時間かけるのも全然悪いことじゃないと思うんだよね。だから焦りすぎないで、少しずつ自分の目標を決めていければいいと思うよ。
といちゃんはいろんな人と関わっていろんな経験しながら、きっと納得のいく方向に進んでいけると思う!私も応援してる!