わからないけれど、きっと名盤
先月にリリースされた折坂悠太の『呪文』について書きたい。2010~2020年代の最注目ミュージシャンだが正直わたしにはわからない。4th『呪文』を聴いてもさっぱりだったし、前作『心理』に関しては、期待しすぎて期待はずれを食らい、がっかりした(自分勝手)。だから、折坂悠太のプロフィールなどに関しては検索してもらえればと思う。ここにそれらを書き連ねることはできるが、できれば自分だけの言葉で書きたいので割愛します。
『呪文』について書く前に、折坂悠太との出逢いとは? 確かコロナ禍直前だった。わたしのスーパーアイドル、カネコアヤノちゃんがあるライブで体調不良となり、そのピンチヒッターに起用されたのが、折坂悠太だった。カネコアヤノがその際に発信したコメントは「彼ならすべて任せられる」的な内容だった。そこまで言うなら良いミュージシャンなんだろうということで、Youtubeにダイブしたのが、その経緯。で、たまたま『朝顔』という曲に出逢って、これが珠玉の名曲でド*ハマりしたんだよね。衝撃的でした。何者なんだ!とざわつきました。毎日毎日『朝顔』を聴きまくり、ひとりカラオケで歌いまくる日々(むずかしすぎて歌えねえんだ、これが)。序盤で聴かせる低音の歌声、サビでのファルセットボイスに歌手としての奥行きを感じさせられた。ベストセラーの小説のように曲展開が見事で、段々と盛り上がってくるあたりが、堪らない。美しい歌詞の世界観、どことなくせつない。そしてエンディングの締め方が斬新で。これはぜひサブスク各社かYoutubeで聴いてほしい《推し曲》です。
で、まだ『呪文』にはイカなくて、『朝顔』からすでにリリースされていた2nd『平成』に辿り着くのだけれど、これも良かった。どこかで聴いたことがある旋律が懐かしく新しかった。そしてそこを褒めるのはズレてるかもだけれど、ジャケが良かったんだよね。赤い背景に首を傾げた折坂悠太のバストアップというシンプルなものだったが、吸い込まれた。これだけで「名盤決定!」と言いたかった。そんなわけで、盛りに盛り上がって待ちわびていた新譜が3rd『心理』だった。結果は先述の通り。ジャケはすごいヨカッタんだけどね。いや、「これは良いアルバムなんだろうな~」って思ったんですよ。リリースされたのは3年前の2021年だったんだけど、ミュージックマガジン(今年で創刊55年)の《2021年邦楽ベストアルバム》に選ばれたので、名盤であることは間違いなくて。わたしにはわからなかっただけで。イタリアンもフレンチも中華も好きだけど、純*日本料理はあまり好きじゃないだよね。それは人の好みの問題だね。
例えは違うかもだけど、北川景子ってめっちゃ美人じゃないですか。でも美しすぎて惹かれないんです、わたしは。太宰治の文学は完璧すぎて読み進められないんです(人間・太宰治には惹かれる)。そんな例え方でおわかりいただけるだろうか。
『呪文』はわたしには相性が合わないだけ。実際は素晴らしいアルバムです。日本の原風景を感じます。歌唱力も一級品。どの曲を欠いても『呪文』にはならないし、この曲順だからこその妙。《天才》と言うのは違う、もっと違う次元の高レベルにある人/音楽。どこかしらおしゃれな感じもするし、多分、そこに食いついて聴いている人もいるのだろうけれど、評価されるべきところはそこじゃないよなあ。まさしく『呪文』のごとく人を呪い、狂わせてしまうその魔力がある。わたしだってその一人かもしれない。魅力を感じていなければ、このおどりばで取り上げることもなかったはずだ。
わたしはもうすぐ50歳になる。昔、わからんかった音楽が理解できるようになったこともたくさんある。ジャズもパンクもシューゲイザーも。だから60になれば、『呪文』や『心理』のこともわかるようになるのかもしれない。それを期待したい。
全然話は違うんだけど、Chappoという帽子屋さんが長野市で7月の頭に展示販売してたんだけど、楽しみにして足を運んだわけ。でも、わたしのアタマが大きすぎて、残念ながら買える物がありませんでした。かわいいのがいっぱいあったのにな。折坂悠太とのパターンもあれば、その逆と言えるような、そういうこともあるのね。でも50歳になるのを機にして、ファッションを帽子から変えたいという希望をChappoさんにお伝えしつつ、わたしの顔/全身写真をメールで送ったりすれば、多分、特注してくれると思うんだけど。
音楽はさ、そういうわけにいかないね。だから好きなんだけど。いや、Chappoさんに関してもそうなのかな。いやきっとそうだ。あの独自の形に魅せられたんだ。いつか出逢うよ、そんな帽子と。わたしはわたしの文章/小説/詩を誰かのために書かない。折坂悠太『呪文』からも、自分らしさを押し出す姿勢から一歩も引かないところに、魅力を感じる。
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