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住人

パンケーキが食べたくなった。

無性に、あの甘いメープルシロップが恋しくなった。ふわふわとしっとりした生地を私はたっぷりとシロップに付けて味わいたくなった。

「帰ったらソッコーに作ろう。」

卵もある。牛乳もあった。そして幸いにもホットケーキミックスが1袋だけあった。もちろんシロップもある。

何故か不思議と作れる準備は万端で、私はちゃっちゃか生地をまぜてフライパンを温めた。

フライパンに生地を落とすと甘くていい匂いがキッチンに充満する。

「私はパンケーキを焼いているぞ…!」

いっそう気分がワクワクしてくる。甘い匂いがルンルンと心を踊らせる。

ふつふつと表面がリズムを刻みだしたら裏をチェックしてひっくり返すのだ。ずっと弱火。これがコツ。

焼き上がったパンケーキは2枚。重ねてバターをひとかけ落とす。そしてたっぷりと、これでもかというくらいにシロップをかける。

幸せである。

贅沢である。

私はいっそうルンルンと心を弾ませる。

26歳は少し大人だ。少なくとも子供ではない。10代でもない。だからといって完璧に大人ではない。経験はまだ浅くて、うにょうにょと迷いながら自分の未来を形成しているお年頃だ。

もう大人なんだからと周りに意識されてから6年が経つ。

大人にならなくちゃいけないんだと思い込みながら、「大人ってナンダ?」と考えながら、それなりに生きてたら6年も過ぎてしまった。

光陰矢の如し。時間が経つのは早いもんだ。

いろんなことがあって大人になんのだな~と、難しそうなことを考えていてた。

考え事をさらに考えているだけなので別に答えは出ない。独り言ならぬ、独り考え事だ。

けれど本当はわかっている。四半世紀生きてきて、ほんの少しだけ、分かったことがある。

私はパンケーキを一口より少し大きめにナイフで切って、フォークでさした。そしてシロップをごっそりとつけてから口に運ぶ。

口の中がパンケーキのふわふわとシロップの甘さで満たされる。

甘くて、美味い。ふわふわとしていてとても美味い。

私は幸せだなあと思った。

ものごとは案外シンプルだ。これが少し分かっってきた事だ。

美味しいものを食べると幸せに成るかのように、物事はシンプルなのだ。

難しく考えているのは自分だけであって、そんな難しいことはそうそうないのだなという結論に至った。

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私は幸せとお腹を満たす為にも今日も今日とて、ご飯を作って食べる。

1人で、そしてたまに誰かと一緒にご飯を食べている。

Clara/くらら

1993|Age 26|Nagano,Japan| 好きな事は料理と映画鑑賞。主に日々の暮らしのこと、考え事などを記事にして書いています。

プロフィール

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  1. t tatsut tatsu

    物事は、意外とシンプルなのかもしれない。

    この一文がとっても心に残りました。
    色々なことを、難しくしてしまいがちだと最近本当によく思います。青い空、布団のふわふわ感、雨の後の匂い…
    ちょっとしたしあわせなことを、感じれなくなることがよくあります。
    人間関係、仕事、日常ですら、たくさんの小さなことが積み重なってしまうこともあります。
    でも、そんなとき、はっと我に返って、頭を上に向けて大きく深呼吸をして、美味しいものを食べて。
    そんな些細な幸せな瞬間、改めて大切にしたいなと思います。

    そして写真がとても素敵ですね
    食べることが好きな僕なので、とてもテンションが上がってしまいました。笑
    ありがとうございます。

    • Clara/くらら

      小さな幸せをどれだけ感じられるか。
      それによって毎日の充実度もガラリと変わりそうです。
      本当に物事はシンプルなのだと思います。

      私は作るのも食べるのも好きです。
      褒めてくださって、どうもありがとう。嬉しいです。