グッバイ・アルコール
蝉の声が消えた。夏が終わった。(残暑への期待値に反比例して、あまりに潔く去っていくものだから、ノースリーブの引き際が分からなくて、なんども寒い思いをした)
振り返ってみると、今年の夏は自分の意思でお酒を飲むことが少なかったなあと思う。取引先との飲み会とか、会社の飲み会とか、旧友との再会とか、それくらいか。
「別に普通じゃん」と思われるかもしれないけど、学生時代の私を知っている人ならびっくりするくらいお酒の量が減った。
まぁ、少しだけ心境に変化があったわけ。
そんな話、ちょっとだけ聞いてもらってもいいですか。
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普段の私はよく喋る。人見知りはするけど、明るいか暗いかって聞かれたら、結構明るい方だ。(と思う)
でも実は、感情を出すのがめちゃくちゃに下手くそ。人と深い関係をつくるのも。
中高生時代に人との関わり方や考え方が歪む人って、かなり多いんじゃないかと思う。ティーンネイジャーなんて、心の刃がむきだしの時期だ。いたずらに近づいてみただけでズタズタにされることなんて、きっとよくある話なんだろう。
例に漏れず、私も思春期に大きく切りつけられたうちのひとりだった。(これも、いつかおどりばしようかな)
「なんでそんなこと、あなたに話さなきゃいけないの?」「別にあなたと仲良くなりたくないんだけど」そう思われるのが怖くて、他人に興味がないふりをした。近づくと、傷つけるし傷つけられる。幼い経験から得た自己防衛本能だ。
人との距離感を誤ってトラブルが起こってしまった日には、それはもうとんでもないストレスを感じていた。ギリギリまで我慢して、溜め込んで、そんで爆発。それ以外の方法を知らなかった。
そんな私のことを分かっている、って顔をした人に出会ったときには、心がそれを激しく拒絶した。なんにも分かってないじゃん、やめてよって。私自身も誰のことも分かりたくなかったし、分かったつもりにもなりたくなかった。
まるでヤマアラシのように日々を過ごしていたら、20歳になっていた。
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1番長く続いたアルバイト先の飲食店は、お客さんがたくさんご馳走してくれる環境だった。週6日入っていたのもあって、自ずとお酒を飲む機会は増えていた。(微々たる額ではあるが、売り上げを増やすため。自分自身を売り込むこともできる)
アルコールの威力は絶大だった。普段なら言えないことが言えたし、できないことができた。
長野県民ならみんな知っているであろう企業の会長に、偉そうな口を聞いてみたり。
反対の意見を述べる人に突っかかってみたり。
優しくしてくれる人に思い切り甘えてみたり。
知り合いもぐんと増えて、私を可愛がったり、おもしろがったりしてくれる人も増えた。
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アルコールがあれば、思っていることを口に出すことができた。気が大きくなるから、メソメソ悩んでいたことも少し軽くなって、人とのコミュニケーションも怖くなくなった。それでも、私の心の本質はきっと変わっちゃいなかった。カチコチの、すぐに泣き出すティーンネイジャーのまんま。
それは社会人になってからも同じだった。内なる自分とのすれ違いに疲れて、激しい情動を持て余して、結局本当に伝えたいことは何一つ伝わらない。どうしたら抜け出せるのかも分からなくて、日々疲弊していた。
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そんな頑なな自分の考え方が少し変わったのは、実はつい最近のこと。会社の先輩に、飲み会の二次会で大説教されたのだ。
私はどうにも悔しくて、「私のこと、何にも分かってないのに、そんな風に言わないでください」と震える拳で伝えた。
先輩は「分かるわけないじゃん。少なくとも今までの言動じゃ何にも伝わってこないよ」と言った。
ハッとした。
私のコミュニケーションは、「相手なら分かってくれるはず」という期待値の上に成り立っていたんだ。相手の想いは相手のもの。それなのに、無意識に自分に合わせて折れさせようとしていたんだ。だから、「拒絶されるかもしれない」コミュニケーションは、お酒の力を借りて‘言い訳’を作ってきたんだ。
なるほどなるほど…。
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アルコール、今まで弱い私を守ってくれてありがとう。でも、会う回数は減らしましょう。これからは真っ直ぐ人と向き合える自分になるんだ。
私はまわりに迷惑をかけながら大人になっていく。いつか必ず還元しますから、今はどうか許してください。
残暑が短いのだって、誰のせいじゃない。
ricopinさんのアルコールとの別れ、
それを決意するにいたった心境にぐっときました。
>>「私のコミュニケーションは、「相手なら分かってくれるはず」という期待値の上に成り立っていたんだ。相手の想いは相手のもの。」
分かってくれるはずっていう前提がなくなるとコミュニケーションって難しいけど、でも、その分、心が楽になる気がします。
私も「わかってくれるはず」とずっと思ってた時期があって、でもある日、私とこの人は別の人間なんだからちゃんと伝えないとわからない。ということがわかって以来少しだけ人とのコミュニケーションの取り方や距離感が掴めてきたように思います。
アルコールに感謝しつつ、でもお別れしたricopinさんはきっと素敵な大人になれると思います。