ひと

住人

今年の年始。たくさんの人の前で司会をした。地元の新年祝賀会という市の行事。所属している地域団体みたいなところに話がきて、当日予定が空いていたメンバーが司会をすることになった。その内のひとりが自分だ。根が陰キャなので人目に立つ仕事を好んでやる方ではないが、なんとかやり切ることができた。

20代後半から、色々な場に足を運ぶことが増えた。多くの人との出会いがあり、知人友人がたくさんできた。一昨年11月、人生の半分ちかくを過ごした長野を離れて地元に戻ることをFacebookで伝えた文章には、たくさんのメッセージが届いた。根が陰キャなのに、なんでこうも素敵な人たちに出会えて、言葉を交わしてくれるのだろう という気持ちがエグい。

僕は、はじめからこういう人間だったわけではない。人前に立つことはなるべくしないように生きてきたし、こんなに人の温かさを享受できる人間ではなかった。



20台前半は、ひとりで過ごすことが多かった。長野にいた当時、1日12時間30分会社にいて、これが定時で、かつ月の半分は夜勤という、とんでもない仕事をしていた。休日は、何をするでもなく、アパートの自室で鬱々と過ごしていた。僕は20歳から社会人になったが、学生時代の友人は皆、大学へ進学(編入)したため、周りに友人がいなかった。ネットサーフィンをすると、住んでいるところの近くで、なにやら意識高い系の人たちがイベントをやっていたり、アングラなイベントが行われていたり。そんなことがチラホラ目についた。興味はあったが、足を運ぶ勇気がなかった。

休日★自室で鬱々★ネットサーフィン が板についてきた頃、とある情報を知ることになる。それは、長野市の某コワーキングスペースのスタッフとして、ハタコシという男が加わった、ということだ。見覚えがあった。僕の友人が母校の学生会長をやっていて、校内を連れ回していたのを見たことがあるし、友人が会長をやめた後に彼が会長になった。だから、一方的に知っていた。

その後、某コワーキングスペースでワークショップが行われる、ということも知った。アート、イラストで楽しもう。という趣旨のものだ。今までネットサーフィンで見つけたイベントは、意識高い系、もしくはアングラ、みたいなものが主流であったが、この会は何より楽しそうで、自分が足を運んでも良いような、やさしくやわらかい雰囲気を感じた。当時の僕は、今よりもさらに臆病で。躊躇したが、勇気を出して参加してみることにした。そこで出会ったのが、おどりば6号室のrokuさんだ。

のぞきこむハタコ氏
INU ZO


このワークショップに参加して、誰でもふらっと参加できる楽しい場所がある、そしてそれをつくれる、ということを知った。自分もこういう場をつくってみたい、という気持ちが湧いた。そんな気持ちを後日ハタコシ君にポロっとこぼした。でもやっぱり勇気が出なくて、気持ちを吐露してから数ヶ月が経過した。

KETSU
度重なる圧力


自分の勇気がでないばかりに、何ヶ月も何ヶ月も先送りにし、ハタコシ君から「やらないのか」の圧力をかけられ(やらないのかとは言われていない)、最初に話してから3ヶ月後くらいにイベントを開催した。

ワタナベが初めて企画主催したイベント・PICS TALK より

rokuさんがつくった場のように、誰でも楽しめる場所 を目指しイベントを企画した。写真の上手い下手は関係なしに、自分が撮った写真を見せたり他の人の写真を見て話し、コーヒーとドーナッツを食べるという、それだけのこと。はじめての場づくりであり、いま振り返ると拙い所は多々あったが、参加者の笑顔が見れたので、やってよかったと心から感じた。

イベントに参加してくれた人たちと、後日、改めて会ったり。その人たちが参加する別のイベントに自分も参加したり。そうやって、自分の世界が大きく広がっていった。

creeks coworking nagano、tsunagno、長野県立図書館、ネオンホール、ナノグラフィカ、西ノ門ホワイトハウス、studiosonne、光ハイツ、もんぜんぷら座、ヤドリンゴ、ワカホーム、nabo、愚痴聞き屋(路上)。
いろんなところに行ったなぁ。



話を現在に戻すと、地元の地域団体のようなものに加入し、いまも場づくりは継続して行っている。場をつくるときに、いつも考えているのが、初めて参加する人にとって、やさしい居場所であるかどうか だ。ハタコシ君とrokuさんと出会ったのが、そういう場所だった。2人のおかげで、いまの自分がある と僕は思っている。いまなお交友関係が続く人たちと出会えたのも、振り返ってみると、似たような場所だった。

人と出会うことでしか、人は成長できない。受け入れられなければ、自分も誰かを受け入れられない。周りでなにか行動を起こしている人がいるから、自分も行動を起こせる。すべてが人だ。居場所が大事なんだ。僕自身が自分の成長を一番実感しているし、周りの人へ感謝していて、出会いが大切だと考えているから。良い出会いが生まれるような、やさしい居場所 をつくりたい と強く思っている。

場づくりに正解も不正解もない。つくる人たちが、それぞれの正解である場をつくっていたら、それで良いんだと思う。ただ、僕にとっての正解は、初めて参加する人にとって、やさしい場所 なんだ。

今だって自分に自信があるわけではないけど、
場づくりは ずっとやっていくんだと思う。
肩書きがなくても、有名にならなくてもいいから、
そういうことをやる人 であり続けたい。

ワタナベ

新潟県上越市生まれ。THEYELLOWMONKEYが好きです。

プロフィール

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  1. ゆうりゆうり

    なべさん、お久しぶりです!9号室の、ゆうりです。
    場作り、すてきですね。
    わたしも、根が陰キャなので、初めての場に参加するまでに、すっっっっっっごい腰が重いです。
    でも、なべさんのように、優しい「場作り」ができる方の場なら、参加したい!って思います。
    写真が下手でもいい、写真を見せあってコーヒーとドーナツをいただくって、本当に魅力的。もしまた開催される機会があったら参加したいです。

    • ワタナベワタナベ

      ゆうりさん

      お久しぶりです!! わたなべです。コメントありがとう!!
      初めての場に参加するの、腰が重いのは自分も同じ。共感できます。
      チャライかんじとか、特定の人のみをヨイショする空間だったら、嫌だなぁー って思う。
      どんな場所か、わからないから、初めての場は自分も苦手です。自分が長野にいた頃、いろんな場所に顔を出せていたのは、自分の周りに優しい場所が(実は)多くあったことが、わかったから なのかなぁ と思っています。

      場作りについて褒めてもらって、嬉しいです。なにかオンラインとかで、ゆうりさんや、おどりばの住人のみんなと話せる時間が、欲しいなぁ と思っています。ここは優しい場所だと自分は思っているので。