おやき

住人

仕事終わりの西友。
明日は休みを取って南信の山の中に入るので、行動食になりそうなものを探す。
おにぎりが安売りセールだったのでこれに決めたと思って手に取るが、消費期限が本日の夜中1時である。
安売りを見たあとに、通常の値段のおにぎり(たった+20円なのに)を買う気になれず、惣菜コーナーをウロウロしていると、我が県ソウルフードのおやきが目に入った。

子どもの頃はそんなに好きではなかったおやき。中身が大根とかナスとか、おじいちゃんおばあちゃんの家とかで出てくるような地味な野菜ばかりで、あまり美味しいとも思わなかった。
しかし30代になると、おやきを積極的にチョイスするようになった。生活の中で野菜を摂る機会が貴重であり、身体にとっても重要なことをなんとなく感じており、それが手軽に達成できるのがおやきなのだ。
そして、味も良いと感じるようになった。大根やナスのような地味な野菜だからこそ繊細な味付けが施されており、野菜をここまで主役にできている食べ物は他になかなか無い。
ちなみに、僕の大好きな具はかぼちゃである。そこらじゅうで売ってる流行りのスイーツは自分にとっては甘すぎる。しかし、かぼちゃのおやきはかぼちゃ本来のちょうどよい甘さが詰まった、僕基準でジャストなスイーツなのである。

明日のお供がおやきに決まり、いくつかカゴに入れて売り場を離れた。
すると、金髪の外国人女性がどこからかふらりと現れ、僕が見ていたおやきコーナーで物珍しそうにおやきを手に取り始めた。
おそらくウキウキでおやきを選んでいるところを見られたのだろう。このジャパニーズがそんなに楽しそうに選んだこのシロピロシキはなんだということで、じっくり選んだおやきを一つカゴに入れていた。

それにしても、外国人が街中にかなり増えたと感じる。駅前付近を歩いていれば5分に一度は目にするし、夜に人気のラーメン屋に入るとだいたい一人ぐらいはいる。
そんな外国人が、日本の食べ物を興味深そうに選んで食べているのを見ると嬉しくなる。それ、こういう食べ物なんだよ、こういう食べ方をすると美味しいよ、こういう種類もあるよ、とかいろいろ教えたくなってしまう。
大学時代に海外を放浪した際、食堂や市場で現地の人がたくさん話しかけてくれたのは、きっとこんな気持だったのだろうなと、今になって思う。

先程の外国人女性と、たまたまセルフレジで隣になった。ちらりと覗くと女性が購入したのは野沢菜おやき。長野代表の大人気具材である。
「あなた、センスがありますね!!」と、つい話しかけたくなったが、バーコードスキャンに繰り出される抹茶豆乳や栗芋羊羹の姿に只者でなさを感じ怯んでしまい、とうとう会計を終え去ってしまわれた。

soshi

1991年生まれ。長野市出身。 大学の専攻はジャーナリズム。休学し9カ国放浪後、地元市役所に入る。福祉部門に配属となり、障害者のソーシャルワークなどを行なう...

プロフィール

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