p.6： ただいま、屋上から

こんにちは、屋上から失礼します。
誰も住んでいない、屋上から。

いま悩んでいることが解決するまでは
何も書けない気がした。

10月から11月初旬にかけての私は、
「悩んでいる自分」も
「決められない自分」も
嫌になってしまって、ありえないほど塞ぎ込んだ。

7号室から出られない。

悩んでいる自分の一部始終を公開して、

でも決まっていない。私はダメ人間。
つらい。無理。

みたいなことを書き連ねることはできたかもしれない。

だけど違う。私は立ち止まり続けることを許されたくておどりばにいるわけじゃないから。

それでもいいよと言われたくて、ここで叫んでいるわけじゃないから。

答えを出すのは結局自分だから。

11月は、7号室から出るのを諦めることにした。

もうすぐ12月がやってくる。7日はすぐにやってくる。
だけど私はいま、屋上から叫ぼうとしている。

ここに来てくれる人には、いち早く伝えたかった。
私、やっぱり東京に行きます。

＿10月7日

東京に行くって決めたのに
東京に行くのが怖くなって
どうしたらわからないというようなことを
7号室で叫んだ。

おどりばを読んでくれているさまざまな人から
メッセージをもらって、話を聞いてもらった。

東京に行かなくても、うめこちゃんはすごいよって言ってくれる人
心の声に気付けてえらいよって言ってくれる人
すごい人になれなくても大丈夫だよって言ってくれる人
一緒に考えてくれる人

ぜんぶぜんぶうれしかったし、みんな優しいし、あったかいし、胸がいっぱいだった。

だけど、悩みは平行線のまま10月が終わった。

誰に何を言われても
東京に行きたくない理由ばかり出てくるのに、

よし！長野に残る！

と決心することはいつまで経ってもできなかった。

どうしてだろう。
なんとなく自分でも分かっていた。

私は、
「東京に行くか長野に残るか」悩んでいるんじゃない。
「自分が何をしたいのか、どうなりたいのか」悩んでいるんだ。

すごい人になりたかった。

ただ漠然とすごくなりたくて、
たぶんそれは「何者」かになりたいとかそういう感じで、
ナニモノにも代えられない私として
人様に認められたいみたいな、そんな感じの

「すごい」。

すごい人になりたいなんて
口で言うのは簡単だけど。

今の私はというと、親のすねをかじって
バイトだけして家でゴロゴロしているだけの
「プー太郎」なのだ。

私の目指す「すごい」は
口先だけで紡がれた、ただそれだけの偶像。

私は、生きるのが得意じゃない。

時間を守って行動するのも
忘れ物をしないで出かけるのも
計画的に時間やお金を使うのも
決めなくちゃいけないことをすっぱり決めるのも
全然できない。

だから、迷惑をかけてきた。
親にも
友達にも
部活やサークルの仲間にも
バイト先にも

本当は、
すごい人になるなんて夢のまた夢なんだと思う。

すごい人になりたかった。
でもちょっと、まだ早い。ちょっと、烏滸がましい。
だけど私は、私として生きることを諦めたくない。

そのままで大丈夫だって言ってくれる人もいるし
そんな自分を受け入れて生きていくのがいいのかもしれないし。

このまま甘やかされて生きていくのも悪くないな。

……

……とは思えないんだ。

自分を許すことと
自分を諦めることは別物だと思う。

私は私を、諦めたくない。
立ち止まりたくない。
自分で決めた道を自分で塞ぎたくない。

すごくなくてもいいから、
すごくない私を許してくれた人たちに
何か返せる心の余裕と生活の余裕がほしい。

東京に行くのはまだ怖いし
ホームに落ちてから一度も行けてないし
地元が好きだし
先のことは全然見えないし
この選択が正解かどうかなんて分からないし
東京に行ったら自分を許せるわけじゃないだろう。

それでも、私は東京へ行く。

自分で決めたことだから。
就職して、「社会人」になってみる。
経験してみたかったことを
いくつも、経験してみる。

やりたいこと、なりたい姿なんて
やっぱり
今は、この選択がいちばん
なりたい自分に近い気がしている。

地元ではどうしても甘えてしまうから、
地元とは少しだけ離れたところで。

たくさんのことを吸収して
自分が稼いだお金で生活して
私が生きた爪痕として、文章を残したい。
あわよくばそれで誰かが救われてほしい。

少しの「すごい」が積み重なって
いつか自分を「すごい」と思えるように。

東京での暮らしはどうかな。

まあたぶん、だいぶ。
つらいこともあるだろうけど、

そうだなあ。
そのときは、

そのときは、
全部おどりばに書いてやるからな。