内側に しにゆく

住人


コロナが流行りはじめてすぐ、私は大学2年生になった。あれからもう1年半が経とうとしている。

「おうち時間」「密を避けて」「飲み会?もちろん禁止」「オンライン授業」「基本マスク」「アルコール消毒」「検温」「少しでも風邪症状があったら休んで」「黙食」「教育学部のみなさん、子どもと関わるサークルはいったん活動を休止してください」

さまざまなことが叫ばれてきた。禁止された。後ろ指を刺された。

大人数でわいわいすることも、外で大声で笑うことも、新しい人に出会うことも、私は大好きだった。なにより私は合唱が好きで、みんなでやる音楽が好きで、たくさんの人が集まって作り上げるもののことが好きだった。

だった。

返してほしい。私は私を返してほしい。

どこに訴えたらいいのかわからないけれど、返してほしい。

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この一年半で内側に向いてきた自分を感じる。よくも悪くも繊細になった。小さな幸せで満足しなきゃいけない毎日が思ったよりずっと幸せだった。感情が震えない毎日の居心地の良さから抜け出せなくなった。大きい幸せも達成感もないけれど、その代わりに不幸も苦しみもない。感情が揺れるのが怖くなって、何も感じたくないからニュースを見るのをやめて、テレビを部屋からなくして、あんなに心を動かしていた音楽に距離をとった。ドライフラワーがこの世で一番綺麗なものに見えてしまうような、

歌の声は良くなったしピアノは初見でもある程度弾けるようになったしフルートを吹けるようになった。でも、動かないのだ。心が。以前のようには動いてくれないのだ。そのことに気づいてしまった。

あんなに人と創るものが好きだったのに、全て禁止されてから止まったままの心の部屋がある。動かなくなった部分を感じる。動かさないようにしていた、そこに気づかないようにしていた、でも最近ふと気づいてしまった。怖い。人と関わることが怖い。新しいことに出会うのが怖い。何かをしようとして中止になる、というパターンを何回も繰り返した。旅行も、演奏会も、対面授業も、遊びの予定も。そうしていくうちに最初から諦めるようになってしまった。どうせできない。どうせやらない。そうやって期待する時の胸のわくわくに蓋をしていった。しかたない。しかたない。しかたない。しかたない。しかたない。頑丈な、頑丈な、蓋だ。

学生はみんなこういう気持ちでいるのだろうか。私はすごく生きづらい。画面越しにしか出会わない先生の課題に取り組む苦痛。1人で過ごす土曜日の寂しさ。マスク越しじゃ笑ったって半分も伝わらない。

この夏は暑い。精神的な苦痛も相まって夏バテが長引いた。余計どこにも行けない。あと一年半の学生生活、どんなふうに私は幸せになれるだろう。挑戦の一つもできずに終わってしまうのだろうか。

音楽で心を震わせることはまたできるだろうか。

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(高校生の時に詠んだ短歌)

だからこそわたしはうたうこの今をつなぐ命のそのまた先へ

伝えたい疑い言葉が人間が全部を乗せて地球は重い

一拍の休符のなかに見えた空どこまでも青 はてしなかった

青春は私にとって竜宮城地球の法則ぜんぶ無視する

ゆまいさか

夢は、超すごい音楽の先生になることです。

プロフィール

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