つよさの自問自答

「つよさ」って何だろう。
生きていくための「つよさ」について。
必要なのか分からない「つよさ」について。
そもそも、「つよい」ってどういう状態？
考えるほどに深まる「つよさ」の謎に迫るべく
脳内に住んでいる先輩と後輩に
それぞれが考える「つよさ」論を持ち寄ってもらい
問いかけたり、答えさせたりしてみました。

おっす。ちょっと時間くれよ。

ー先輩！今日は突然呼び出して何の用っすか？

昨日のプロレス見たか？

ー見てないっすけど…。僕が見てないなら先輩も見てないんじゃないですか？

まぁな。俺とお前、同じ脳だしな。

ーなんなんすか。急に普段は全然興味ないプロレスのこととか言い始めて。

まぁ、なんていうか俺、「つよさ」について論議したくてな。

ーはぁ。ジャイアント馬場とアントニオ猪木のどっちがつよい、みたいな感じっすか？

いや、プロレス論議じゃなくて。もっとこう「つよさ」そのものの話よ。

ー「つよさ」そのもの？

いやさ、みんな簡単に「つよい」って言うけど、「つよい」そのものについて改めて考えたことあるか？ないだろ？

ー確かにないっすね。（なんかめんどくさそうっすけど…）折角なんで、休憩中のコーヒー飲み終わるまで付き合いますよ。

全部つつぬけだからな。

「つよい」は「勝てる」？

てかさ、お前としては「つよい」ってどういうイメージよ。

ーう～ん、「つよい」っていえばライオンとかサメとか思い浮かびますけど…。ちなみに先輩の中で「つよい」って言ったら何が思い浮かびます？

あ～。そういやこの前、ゲオで映画「キングダム」借りてきて観たんだけど、大沢たかお「つよい」って感じだったな。

ーあれは「王騎」っすけどね

そうそうそれ。名前からして「つよい」って感じだよな。とにかく、登場したシーンから「あ、こいつが勝つんだろうな」オーラがすごい。

ーあー。確かに、「つよい」って「勝てる」に結び付きますよね。ライオンとかサメも弱肉強食の世界で勝ちまくってるし。じゃあ「勝つ」ってことが「つよい」ってことなんすかね。

まぁ、国同士の戦争とか、会社同士の競争、はたまた兄弟喧嘩もそうだけど、勝った方が「つよい」って言われるよな。純粋にパワーのあるほうが勝つし、「つよい」っていうのは分かりやすいよな。

ーそうっすよね。でも、例えばジャンケンだと、「チョキ」は「パー」に「つよい」、「パー」は「グー」に「つよい」、「グー」は「チョキ」に「つよい」って三すくみになりますよね。でも、現実じゃそういかないっていう…。

現実で石と紙をぶつけたら、普通に考えて、紙の方が破れるしな。石の方が密度やら強度やらの数値が高いわけだし。だから、現実、石と紙だったら石の方が「つよい」。ま、それは「破れたら負け」っていうルール付きでの話だけどな。

ーなるほど。勝手に決められたルールの上で勝負してるだけで、例えば「どれだけ円周率を書き込めるか対決」だったら、普通に考えて石より紙の方が「つよい」ですもんね。

数値とか勝敗による「つよさ」ってのは、きっとルール次第で簡単に揺れ動くもんなんだよな。そういやライオンやワニだって、ウイルスや微生物には太刀打ちできないわけだし。だから「つよさ」＝「勝てる」っていうのは違うのかもしれないぞ。

「よわさを見せられる」という「つよさ」

話は変わるけど。逆にさ、「よわさ」ってなんだろうな。それってきっと自分の弱点ていうことなんだろうけど、なんか俺「よわさを見せられる」っていう「つよさ」もある気がしてるんだよな。

ーえ？「よわさを見せる」ってことは、それって普通に考えて「よわく」見られちゃうんじゃないですか？

いや、そうなんだけど、そうじゃなくてさ。まず人間って、どうしようもなく、どこかに一つくらいは弱点があるものじゃないか？例えば俺とかほら、忘れっぽかったり。

ーあー。この前、行きつけのカフェで財布を忘れてきてた時はマジで焦りましたよ。スマホの充電とキャッシュレス決済あって良かったっすね。

うるさいな。いいよそんな鬼の首を取ったように言わなくても。 文明に感謝して、今度からホント気を付けるよ。そういうお前だって私服のセンス皆無だろ。

ー結果的に自虐になってるんすけど、大丈夫っすか？

いやもうとにかく俺が言いたいことはだな、どんな人間にも弱点・欠点はあるってことだよ。たとえ、もし完璧な人間がいたとしても、そいつって「完璧すぎて取っ付きづらい」って思われてるかもしれないだろ？だったらそれは弱点だし、そうなってくると誰にでも弱点はあるって言えるよな。

ーそこまでは分かります。それで、なんで「よわさを見せられる」のが「つよさ」になるんですか？

ちょっと考えてみてほしいんだが、「よわさ」を隠した生き方、「よわさ」を隠さない生き方、どっちの方が生きやすいと思う？

ーそれは…「よわさ」を隠さない生き方っすね。「よわさ」を１mmも曝け出せない生き方はしんどいと思います。

「よわさ」を隠せば隠すほど、その人は「つよい」人間だと思われるようになるかもしれないけど、実際は違う。本当は「よわい」ところに見栄を張っているだけなのに、それを隠し続けるのって結構しんどいことだと思わないか？

ーうーん、なるほど。分かるんですけど、友達とか、恋人とか、職場とか、やっぱ見栄を張って自分の「つよさ」をアピールしちゃうのって、人間の性として、どうしようもないとこもありますよね。

そうなんだよな。自分を本当の実力以上に見せたがるのが、人間の性なんだよ。でさ、ここで考えてほしいんだけど、人間にとって「つよがる」っていうのは「つよがらない」よりも、きっと「楽」なことだと俺は思うんだ。

ー「楽」…。まぁ、人間の性っすからね。本能に従ってると、自然と見栄を張ってたり、気付かずに自分を大きく見せようとしてるかもしれないっす。

そう、本能。その本能に抗って、「つよがらないでいられる」っていう「つよさ」もあると思わないか？それが俺が言おうとしてた「よわさを見せられる」っていう「つよさ」っていうことなんだよ。どうよ？

ーなるほどっすね。ってなると、まずは自分の「よわさを認められる」っていう「つよさ」も必要になってきますよね。下手にプライドが高いと、まず無理な所業っすねコレ。

だな。だから、「プライドが高い」っていうのは一見「つよく」見えるかもしれないけど、ある意味では「よわさ」になってしまう時もあると思うんだよ。

ーみんなが「つよがり」あってると、「よわみ」が見せられずに抱え込んじゃうっていうパターンは実際に結構ありそうっすね。

「よわさ」の見えない関係性だと、あっちに頼れないし、こっちも頼られないからなぁ。そうやって考えると、お互いの「よわさ」を共有して、そこを補完できるような関係性の方が、お互いに「つよく」なれるのかもな。

ーなるほど。それが「よわさを見せられる」っていう「つよさ」っすね…。なんとなく理解できたような気がします。そうやって考えてる先輩がいると心強いっすね。近所にあるマツキヨレベルで。

おう、それって一応褒めてるんだよな。それなりに伝わったようで良かったよ。…あ！！マツキヨで思い出したけど、このマツキヨクーポン昨日で期限切れてんじゃん…。使おう使おうと思ってたのに…。

ー…やっぱり僕、先輩を見守ってやらなきゃと思えてきました。

「つよさ」を考える「つよさ」

そろそろ休憩も終了か。結局、今回も「つよさ」って何なんだか分からないまま終わりそうだな。

ーまぁ、そんな一筋縄ではいかないですよね。「つよさ」論議。（ふぅ…ようやく終わりか…）

全部つつぬけだからな。あーあ、もっと余裕があれば『自分の「つよさ」を最大限に活かすためにはどうすればいいか』とか『何のための「つよさ」なのか』とか考えてみたかったな。

ーまだそんなトークテーマ隠し持ってたんすね。…でもとりあえず、こうやって「つよさ」について考えることで、僕はちょっと「つよさ」を手に入れたような気がします。

毎度なんだかそんな感じの結論になってる気がするけど、まぁ、そうだな。今回も、「つよさ」を考えること自体が一つの「つよさ」ってことで。これからも「つよさ」については考えを深めていきたいよな。

ーあ、でも。ウワサで聞いたんですけど、２ヵ月前の「おどりば」から「やさしさ」「おもしろさ」「つよさ」って続いてきた僕らの自問自答シリーズ、今月で最後らしいっすよ。

え？マジで？

ーしかも、来月で僕らの宿主の山吹、「おどりば」から退去するらしいっすよ。

マジでか！まぁ、３月は出会いと別れの季節っていうしなぁ。寂しいなぁ。

ー他人事じゃないっすよ！文字通り。

まぁそうだけど、退去するってことはもう決まってるんだし、しょうがないだろ。

ーそりゃそうっすけど…。あ、そろそろ僕たちも休憩終わりっすね。

よし、じゃ、ぼちぼち行くか。あ、そういやクーポンないけどマスクとか買いに今日は帰りにマツキヨ行くの忘れないようにしないと…。リマインダーリマインダーっと…。

ーあ、僕も買おうと思ってたんですよ。良かったら帰り一緒に行きますか。

お、じゃあまたどっかで待ち合わせしよう！そしたらまた別の場所で「つよさ」論議の続き、やろうぜ。

ー（まだやるのかこの人…）…了解っす。

つつぬけだからな。

「つよさの自問自答」おわり