空腹は最大の調味料である
食事に関して、僕は一日2食か、やすみの日、一日中家にいて運動しないときは1食ちょいで済ます。
そのくらいが自分にとって心地よい。
親とか会社の人に、時たま「ちゃんと3食食べてる❓」とか心配されて聞かれるけど、「はい」と言って誤魔化している。
2食か1食っていうと、「ちゃんとたべなきゃダメだよ」って言われて対応するのがめんどくさいからだ。
お金の問題ではない、一日3食食べるくらいのお金はある。
お腹が空いたら食べる、っていう動物的な本能に従うとそのくらいの食事回数で丁度良い。
会社に入社してすぐ、3食しっかり食べてたら、仕事中眠いし、体がダルいことに気付いた。
そして、ある日、食事に関して、どうやって何気ない食事で幸福感を得られるか、350円の牛丼をどうやったら美味しく食べれるか、考えた結果、フルマラソン42km走った後に食べれば、どんな食事も美味しくなるのではないか、と思い立って、50kmのトレイルランニングに参加したことがある。
高校までずっとサッカーをして、大学でもサークル程度だけど動いていたから、体力には少し自信があるとはいえ、それはもう過去の話。
とりあえず、ノリと勢いで参加料1万くらい払った。
そして、1週間前に、なんとなくそれっぽいバックとシューズ、非常食をスポーツショップで買い込んだ。ざっと4万くらい。
開催は土曜だったので、金曜の夜勤明けで、参加した。
スタートして10km過ぎたあたりから、今すぐ帰りたくなった。
もう本当に今すぐ帰りたい、辛い、苦しい。
参加したことを後悔して、あれ、おれなんでこんなことしてるんだっけ❓
って思った。
牛丼を美味しく食べるため、、、ただそれだけ、、、それだけのために50kmの山道を走っている、、そう思うと全然パワーが湧いてこなかった。
文明の利器、車を使いたい。
けど、車を使ったら意味がない。
走ってる途中、スタート前に主催者が言った言葉を思い出した。
「トレイルランニングは山の素晴らしい景色が見れる、辛いと思わず、ぜひ楽しんで走ってください、きっとトレイルランニングを好きなるはずです。」
目の前の果てしない絶壁に、絶望しながら、悶え、苦み、二度とやらないと心に誓った。
絶壁を一つ超えると、いよいよ素晴らしい景色かなと思ったけど、絶壁を超えると絶壁だった。
絶壁をいくつか乗り越え、山の頂に来たけど、素晴らしい景色は、雨と風で目の前が真っ白で、寒さでそれどころではなかった。
途中歩いたり、止まったりしたけど、なんだかんだで完走した。
8時にスタートして、15時前に帰ってきた。
ゴールしたときは本当にホッとした。
と、同時に思った、俺のゴールはここでない、俺のゴールは空腹の状態で牛丼を美味しく食べること。
そう思い、すぐさま、疲れ切ったバキバキの身体を温泉施設で洗い流し、すき家で牛丼をテイクアウトしてコンビニでチョコとアイスコーヒーを買って帰宅した。
帰宅して食べた牛丼はやはり、格別に美味しかった。
50km走った甲斐があった。
あの玉ねぎと牛肉の甘みが、身体中に染み渡り、350円の牛丼のありがたみ、食べることの喜びを噛み締めた。
350円の牛丼を美味しく味わうために5万払って、50km走った。
良い経験だった。
でもトレイルランニングは好きにならなかった。
一日3食牛丼を食べれるだけのお金はあるけど、あの時食べた1杯の牛丼の美味しさは今も心に残り続けている。
そして、改めて、空腹は最大の調味料だなとつくづく思う。
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