p16:ちぐはぐ

住人

今月こそは、今月こそは、と繰り返して
気がついたら10ヶ月も経ってしまった。

いつか「おどりば」に書いてやるからな。
そう意気込んで戦ってきたのに
このざまだ。

私はいま、長野でこれを書いている。

上京する女の子を応援するテレビ番組に出て
カメラの前で選んだ六畳のちいさな部屋は
もう私の部屋ではなくなってしまい
あの部屋で集めた思い出たちは、
実家の寝室に詰め込まれた。

営業と制作ディレクターとライター。
三足のわらじを履くような仕事をしていた。

東京で働いた1年間のことを思い返すと、
それなりに頭がおかしかったと思う。
要領の悪い自分を呪いながら
私は、毎日夜遅くまで働いていた。

頑張ったら結果が出て、
結果を出せたら今よりも自分を愛せる気がしたから

だけど繁忙期が終わって、
いろいろなことを考える「余白」ができたころに
そこまでしないと自分を愛せない人生はとても悲しいし
そこまでしたところで満足しないって気付いて、
それより簡単に自分が愛される場所に逃げてしまいたいなと思った。


その頃にはもう私の身体はぼろぼろになっていて
休職することになった昨年の6月には
寝て起きて寝ることしかできなくなってしまった。

食べ物がなくなったら重い身体を引きずって出かけ
通院だけする日々が続いた。

休職してから頻繁にくる社長からの
「今後どうするのかはっきりさせましょう(退職しろ)」
という連絡から解放されたかったこと、

この先「東京に残って」何をしたいのか考えるには
精神的にも経済的にも余裕がなかったことから
10月の末に退職を決断し、先日長野に戻ってきた。

さて。これから何をしようか。

お医者さんには
「とにかく休んで、元気になったら先のことを考えましょう」
と言われたけれど

休み方も、元気だった頃の自分も
どんなだったか忘れてしまった。

ベッドの上で動けないまま、
日当たりのいい窓の外を眺めていても
すこし体調がよくなって、人に会っても
自分がこの先どうなりたいとか
どういう仕事をしたいとか
何をしたいとか
何も浮かんでこなくなった。

私が休んでいる間に周りは進んでいて
同じ年に大学に入ったはずの友人たちは
もう社会人4年目に差し掛かっていて

いっぽうの私は、動けないまま
ただ息をしているだけ。
焦っているけど進み方が分からない。

―更新に随分時間がかかってしまったこの文章でさえも、
 ここからどう書き進めていけばいいか分からなくなっている。

昨年のうちに書き終えようと思っていたのに、年を越してしまった。

ここまでの文章を読んでくれた人をすっきりさせることができなくて
書いている私もすっきりできなくて残念だけれど

今回はこれでおしまいにしようと思う。

2022年は、
停滞してしまった自分を取り戻したいと思っている。

長野に戻ってきたので、会える人には会いたい。

私はたぶんプライドが高いので
挫折したことが情けなくて
いまは自分の話をしたくないような気もするけど

だけどすこしずつ、誰かと対話して
自分とも対話できるようになりたいと思う。

曖昧なことしか言えないけれど、
これがいまの私の精いっぱいだ。

ぐるぐるまわる、おどりばで。
ちぐはぐな私の物語は、まだつづく。

つづいてしまう。

うめこ

すごい人になりたかった人です。

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