「守りたい」

住人

「あなたのことを、ずっと守りたい。」

自分が先行するのが、ある種当然のような結論に至るところに、それでも自分が守りたいと思える存在があるということは、とっても素敵なことだと思う。

「守り方」は、人それぞれで、物事によっても大きく異なると思うけど、自分という軸に、大切なものという支柱が重なることで、より自分自身を大切にできるようになるのではないか、と、最近ではその矛盾じみた法則に、気づきだしてきた頃なんだなあと、信じたい。

一方で、もちろん、そんなのは守る側の勝手だ、守られる側は、守って欲しいと、必ずしも思っていないんだよう!という見方もできる…

…昔々、あるところに、とある小学4年生の男の子がいた。活発で快活で、周りからも人気を得ていたふとっちょ。足が速くもなければ、別に特段かっこいいわけではなかったが、勉強を真面目にやり、授業参観などでの他の子の親にもしっかり挨拶することなどから、近所での評判もよかった。この頃県外から引っ越してきて転入してきたちーちゃんに恋をしていた彼。ちーちゃんは、どことなく都会的で、何事も沙汰なくこなし、とにかく可愛いこともあって、クラスに直ぐ馴染んでいた。…とある日、朝登校すると、クラスの前には、ちーちゃんとター助の相合い傘の落書きが廊下にされていた。新校舎になって間もない新品の廊下ということもあり、担任のtは激怒した。その夕方のホームルーム、犯人が出るまで、帰さないといった。…ふとっちょは、気が気じゃなかった。手まで繋いで歩いて帰ったちーちゃんのこと、誰かに取られてしまう恐れの焦燥と、こんなことをする奴がこの学年にいる等の正義感と、そして…ここで手を挙げれば、みんなをすぐに家に返せる、みんなも困らない、自分の親もむやみに帰りが遅くなったことを咎めない…という気持ち。…結果は、ふとっちょの義民的行動により、収まった。以降、ふとっちょは小学校にいる間は、少なくともいじめられ続けることになってしまった。…

というように、何かを守る、という精神は、ある種エゴイズムばかりのものだとも、考えることもできる。結果その「守る」という行動をした自分自身に酔うことによって、その自分を見てまたよくやったと言ってしまうことによって、台無しになってしまうことだって、沢山あると思う、けれど。

それでも、守るという気持ちが湧いてくるということは、その対象のもの、こと、人も、もう一人の大切な「自分の一部」だというような、いやむしろその自分よりも、もっと大切だというような、そんな大層な気持ちの躍動がなければ、行動に移せるパワーにすら至らない。ここまでは自分以外のものに対していってしまっているけど、自分自身に対してだって、もちろん言えている。たとえば、

自分が傷つかないように守る

のと、

自分は大切な存在だから守る

という「守る」のベクトルはまた違って。 

後者の感覚が先に来た上で、前者に向かえば、それはきっと、「守る」さんの本望だろうに。どうしても、前者が先にいきがち。

こんなふうに、守る、さまざまな形が、ある。

…ある程度の歳までは、その守ることへの情熱なんて傾けなくてよかった。けれど、歳を少しずつ、重ねていくにつれてその想いは、新しいものを常に見続けていたいという情熱の中に、少しずつ保護するための下準備を勝手にするようになっていくセンサーがあるみたいな、そんな感じになって、勝手に湧いてくるようになった気がしている。

まだまだ、僕にとっての「守りたい」を、本気で守りきれたことがないけれど、それはきっと、まだ守るに値するような僕が、ここにはいないからなのだと思う。何をどうすればそのような自分になり切れるのか、まだわからないけれどそれでも、少しずつでも、「守りたい」が増えてきているような、そんな気がしている。

自分よがりの、守りたい、にならないようにする。大事なことなのかもしれない。なんだかんだよく、突然ピンチで守りにきてくれるスーパーヒーローだって、要請してきてくれる場合も、突然勝手に来て勝手に守りだす場合だってある。

でもきっと、そこには

愛があるから、うまくいくんだろうな。

守るとは、愛すること。きっと、そうなんだろうな。守るには、愛がなければきっと、よがり守りになってしまうんだろうか。まだまだ、僕には色んな物事への愛が、足りないのかもしれないな。いつか、僕が、万のことを

「守りたい。」

10号室 t tatsu より

t tatsu

山梨在住。あっちいったりこっちいったり、浮き沈みの激しい人生。音楽、本、映画やことばを好みます。多趣味多忙が代名詞。 …「あたりまえ」のことは、そうでもない...

プロフィール

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  1. こもれびこもれび

    「自分のために」動く以上に「誰かのために」動いた時の方が
    凄いエネルギーが出るとどこかで聞いたことがあります。

    エゴにはなりたくないけれど、
    本気で誰かの為に行動するっていいですよね。
    それが自分の幸せに繋がるとなおいいな。

    そうやってお互いに相手のために、相手を守るんだって考えられる人ばかりになれば、
    自動的に世の中よくなるかと。それを信じて行動してます。

  2. t tatsu

    こもれびさん

    コメントありがとうございます( ^ω^ )!!

    自分もとてもそう思います。
    個人の自由や権威がしっかりと主張される世界は、それも確かに魅力的です。
    そのなかで、たくさんの人が、どこかで相手のために、と思いながら
    行動することができればよりきっと素晴らしい世界に、もっとなると思います。
    自分もそんなことを信じて、行動して行きます

    ありがとうございます!(´∀`*)