10秒だけで、いいから

住人

10秒だけでいい。

10分なんて言わない。

10行のことのはでもいい

10文字だけでもいいから

もう一度だけ。

そういう瞬間を、記憶している。

そういう瞬間を、夢見ている。

人は、いや

少なくとも、僕は、がめつい人間だから

こうだったら、とか、こうなっていれば、とかって、思ってしまう性を持ち合わせている。

その時どういう決断をしたなら、って。

今となっては何も、進めることはできないのに

自分を夢遊歩行させては、分かれ道をドローンで探索させるように、ありもしなかった

「未来」を、旅しては、

自分を嫌いになっていく。

でも、もし、10秒だけ、

「その瞬間」に戻ることができたのなら、

あなたは、僕は、何をするだろう。

好きだ、と想いを伝えるのか、

ありがとうを形にするのか、

言葉なんていらない、行動だけでいいのか。

選んでいない分かれ道の、その先には

何があったのだろうか。

今よりも、素晴らしいものだったのだろうか。

The future is now.

マーガレット ミード 文化人類学者

こんな言葉もあるとおり、

未来は、今であるとも、僕も思う。そして、確実に今そのものが、過去になっていくことも確かであると。

ならば、今、僕がなにをするべきか、なにをしたいのか、他でもない僕が知っているはずで、知るべきで、知らないのなら、

調べるべきはずなんだけど。

過ぎた10秒に、例え話をふっかけて、

いつまでも迷い道を進む癖が、

治らないみたいだ。

ぼくにとっての、かけがえのないもののひとつは、

音楽だった。前にも少し書いたけれど、

ひたすらに現実をみようとしなくて、音だけに全ての魂と、生きる意味を注いでいた時期があった。

いろいろなことやもの、そして

人が、僕の前を過ぎ去っていった。正確に言えば、しっかりと直視しあい、絡み合った上で、去らせてしまった人もいた。

それ以上に、声にならない声をぶつけあって、共感しあって、今も繋がりあってる人もいる。

そうして今の僕は、ここにいる。

最初のストロークだけで、有頂天に達するような瞬間だってある。10回奏でたって、これは違うって思うことも、ある。むしろその方が多いのかもしれない。それでも、同じ曲を同じ空間で奏でるその重なりは、バンドだけでなく、吹奏楽やアカペラ、ダンスなんかをやっていたことがあるひとなら、追体験には難くないかもしれない。

でも、逆説的に、音を全力で紡ぎ出していた10秒は、「生きている」10秒とはどこか、かけ離れている気がした。

音楽自体が、おそらくアウトローだとおもわれてしまったり、芸術的な人がやることだなって悪い意味で、揶揄されたりしたこともあったからだろうか。

それでも、僕にとっては…

僕にとっては…大切な大切な、10秒のうちのひとつだった。でも、未来…つまり今、にとっては、その10秒が、仕事につながっているとも思わない。今、そのものに全てがプラスにはたらいているのか、と問われれば、むしろその逆である。

その10秒の間に、先を見越してインターネット社会の仕組みを勉強したり、経済学のノウハウを携えてサロンに行ったり、日本一になるためにさまざまな大学や社会人チームを見学して、一心不乱に練習したりしていた人と比べたら、まさに差がつく、10秒の積み重ねであったと、冷静に分析できる。

でも、不思議なもので、その頃の僕は、成功することなんて馬鹿な話だと信じ込んでいた。

いや、まどろっこしいが、アウトローにやり続け、さまざまな物事の最果てを見たほうが、のちのち素晴らしい成功へと導けるのは当たり前だと、信じ込んでいた。あたりまえに卒業して、あたりまえに普通の時間軸を体験して、あたりまえに、「オトナ」を経験していく。そんな人生であってたまるか、と、オリジナルバンドのメタルサウンドに乗せて、頭を振りながら、叫び続けていた。

たぶん、僕は

絶望ごっこ

をしていたのかもしれない。

正確に言えば、今も抜け出せきれているかは、わからない。過ぎた10秒が、いつまでもぼくに作用し続ける。それだけじゃない。起きもしない未来の10秒でさえ、ぼくにとっては、「fact」だから、いたたまれない。

でも、その状態から抜け出す術もわからないし、投げ出したい、と思っているのかどうかと問われると、なんだか自信がなくなってくる。そんなことを思いながら、アルコールでマジックをかけてみると、その時はある程度消えたような感覚になるのに、冷めてから10倍増し、だなんてことはざらにある。

だから、この世界では

生きづらいな。

誰のせいでもない。合うか、合わないか、そんな二択でもない。でも、よってたかって、判断をしたがるこの世界に合わせるのであれば、僕は不向きなうちの一人なんだろう。

だけど、過ぎた10秒によって

生かされていることもある。

未来の10秒を考えるだけで、今日は頑張ろうって、思えることだってある。

10文字の言葉だけで、生きていてよかったなって、少しだけ思えることだってある。

たった、「10」に含まれている、

大きな大きなものたちが、ぼくを探していて

ちっぽけな「10」たちが、僕を生かしている。些細な「10」たちが、今でも僕を殺そうとしている。

そんな、10たちとともに、また今を

必死に生き続けていきたいと、

10を見つめなおして、思ってみたり。

かけがえのない時を、人生の中で

積み重ねられたらいいな、と思う。

戻る、だけじゃなくて、進む時の進み方にもっと、依存してみたい。

絶望ごっこが、いつのまにか

希望ごっこに変わっていたらそれでもいい。

変わらないのなら、それでもいい。

何をどうしようが、僕は、僕。

過ぎた時間も、きたる時間も、僕を作ってくれるかけがえのないもの。願わくば、その先に、関わる人の幸せがあれば、それ幸い。望みすぎだとはわかっている。けれど、

かけがえのない瞬間を、自分だけのものにしてしまうのも、もったいないだなんて、思うのは、未来の10秒を、より良いものにしたいって思い始めたしるしで、良いよね。

…10秒だけで、いいから

僕は、しっかりと、前を向いて

生きていきたい。

10号室より、t tatsuでした。

t tatsu

山梨在住。あっちいったりこっちいったり、浮き沈みの激しい人生。音楽、本、映画やことばを好みます。多趣味多忙が代名詞。 …「あたりまえ」のことは、そうでもない...

プロフィール

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  1. ゆうりゆうり

    絶望ごっこ。
    まさに、2年ほど前のわたしにも、ぴったりな言葉。
    否、正直に言うと、屡今でも絶望ごっこ、してるかもしれません。
    あの時、もっとこう伝えていたら。もっと、こうしていたら。考えたらきりもないし、わたしこのまま生きてて大丈夫か?未来が見えない。しんどい。って、思ってしまう。
    でも、tatsuさんの記事を拝読して、未来が見えないからこそおもしろいのかもしれない。どんな選択をしたって、正解に変えていける力をつけられれば儲けもんだし、大変だったこともネタだと思えば乗り越えられそう。
    10秒後でさえも想像つかない世界だけど、10秒後も楽しく過ごせたら最高ですよね。
    光が差した気がしました、ありがとうございました。

    • t tatsut tatsu

      ゆうりさん

      コメントありがとうございます!
      そして昨日もりあるいどばた、
      ありがとうございました!○

      自分も、今もきっと
      たまに絶望ごっこ、してしまってると思います
      でも、希望ごっこもできるように
      自分のベクトルをすこしだけ
      変える力を身につけられているかな、と思っています

      そうですね!\(^o^)/
      未来が見えないからこそ
      乞うご期待!楽しめたら
      それが何より、今を楽しくする
      魔法なのかなとも思います!

      自己承認をするからこそ、
      絶望ごっこしがちになることも
      あるのかなって思いますが、
      それをさらに逆手にとって
      楽しく笑えるようになったら
      いいなって思います!

      ゆうりさんにとって
      さらに素敵な毎日が訪れますように!!

  2. Clara/くらら

    私はなるべく後悔しないように思いの丈をぶつけるようにしているし、自分で解釈して飲み込もうとしています。正反対なことで一見矛盾しているのですが、観自在すれば紙一重。「自分がよければそれで良い」「結果に責任を持つこと」ができれば案外抜け出せるようになりました。
    私も絶望ごっこしてたのです。この言葉であのころの私が何で後悔しがちだったのか整理がつきました。

    • t tatsut tatsu

      くららさん

      コメント、ありがとうございます!\(^o^)/
      自分が良ければそれでいい。
      その抜け出し方はやはり、
      強いと思います。
      それができないと、主人公になる前に
      悲劇の主人公になってしまって、
      おやおや抜け出せない、なんてことに
      なりかねませんね…

      自分で解釈して飲み込む。
      自分も、くららさんのことばで
      すっと、胸に落ちました。
      ロードストーンの一つになりそうです。
      ありがとうございます!