いつか「悪者」になってしまった私へ

住人

拝啓
いつか「悪者」になってしまった私へ

秋冷が爽やかに感じられる好季節、ますますご活躍のことと存じます。元気でお過ごしでしょうか。私はまだ、「悪者」呼ばわりされていない私です。

さて、ワイドショーでは、今日も誰かが「悪者」として批判のまとになっています。SNSでも、気がつけば誰かが「悪者」として炎上しております。学校でも会社でも、誰かが誰かを「悪者」として非難している光景は当たり前。悲しい気持ちで胸が詰まりますが、そんな「悪者」が蔓延る世の中を生きています。

一人一人の正義が集まって、誰かを磔のように「悪者」にする。そんな社会を生きていると、私も誰かの「悪者」になってしまう日が来るのではないか、という恐怖に襲われることがあります。それは、誰にでも起こりうることだからです。

もしも、「悪者」になる日が来てしまった時。その日の私に読んで欲しいと思い、この文章を書いています。この文章が届く日が来ないことが一番だとは思うのですが、「私は悪者になってしまった」と感じた時に、送っておきたい助言が三つ程ございます。

まず一つめは、嘘をつかないこと。他人にはもちろん、自分にも嘘をつかないようにしてください。世間体よりも、人間としての在り方に重きをおいて、本音と真実を語ってください。その「誠実さ」こそが、今のあなたを「悪者」の呪いから解く第一歩になるはずです。

二つめは、迷惑をかけてしまった人には、素直に謝ること。「悪者」なりに意見があったとしても、それは見苦しい言い訳になっていることがほとんどです。相手の気持ちを「思いやる」気持ち。小学校の頃には学んでいたはずの、人間の基本です。ふわふわ言葉で、素直に「ごめんなさい」を伝えましょう。

三つめは、反省すること。自身を省みて他者から学び、もう二度と同じ過ちを繰り返さないと誓うことです。どんな人間にも失敗はあります。しかし、それを繰り返してしまうことが、本当の「失敗」です。これは月並みな言葉ですが、失敗から成長して過去の自分を恥じらうようになった時、きっとあなたは「悪者」から別の何かに変化していることだけは確かだと言えます。

この三つは、かんたんに見えて、立派な大人でも、なかなかどうして達成できないものです。それでも、「悪者」になってしまったあなたは、これを遂行しなくてはなりません。

悪者になってしまった私へ。自分が自分を「悪者」だと求めたくなくても、社会が、メディアが、他人が「悪者」と認めれば、残念ながら、この世の中では、それはもう悪者です。潔く、人間らしく、この三つだけは守ってください。

そして、同じくらいに大事な約束事が、もう一つあります。自分にとって大切な人が「悪者」になってしまった時。その時は、この三つを大切な人に守らせてください。何卒よろしくお願いいたします。

以前の「おどりば」でも書いている通り、私は転んでも起き上がることが大事だということを学んできているはずです。「悪者」になってしまった時、それは私の真価が試されるときでもあります。ご健闘をお祈り申し上げます。

では。いよいよ寒さが増して身体に堪える時期がやってまいりますが、何卒ご他愛専一にお過ごしください。

敬具

令和元年 十月八日

まだ「悪者」ではない私より

山吹

ペンネーム。note→https://note.mu/fukujin 連絡先→yamaoide@gmail.com

プロフィール

関連記事一覧

  1. しえさんしえさん

    シンプルなのに、でもすごくすごく大事なことが書かれていて、私も、いつか「悪者」になってしまった時、この記事を思い出して読み返したいと思いました。素敵な記事をありがとうございます◎