『なぜ、腹を抱えて笑えなくなってしまうのか』
僕の笑いのレベルは大きく分けて3段階ある。
1段階目は、顔だけ笑顔になる。話の途中で面白いな、となると自然と顔が笑顔になる。口角が上がり、会話のテンポも少し早くなる。
2段階目は、声を出して笑う。ハハハと言う。まじかよとか、くそとか、語彙が少し調子乗り始める。もちろん顔も笑っている。
そして、3段階目。
3段階目では、お腹が痛くなる。笑顔なのだが少し辛そうな顔もし始める。ハハハハハハハハアハと爆笑している。お腹が痛い。油断をするとおならも出る。
この、3段階目の笑いが小学校中学校くらいの頃はしょっちゅう出ていたのに、最近なかなか出ない。痛いはずなのに、この笑いが出て欲しいと願ってしまう。なんで出ないのだろう。身の周りで面白いことが起こらなくなったからなのか、自分の面白いものへの感性が死んでいっているからなのか。どんなことで笑っていたかなあ。思い出せないなあ。本当に思い出せない。
4段階目もあった。
4段階目はおしっこを漏らしてしまう。笑いすぎて、おしっこが漏れてしまうのだ。TPOなど関係ない。ご飯中でも、算数の授業中でも、長電スイミングスクールの練習中でも漏らすのだ。
最悪なことがあった。中村くん(実名)の家に放課後遊びに行った時だった。中村くんの家でもう一人の友人Kと僕との3人で隠れん坊をしていた。じゃんけん的なものをしてKが鬼になった。Kには玄関に裸足で出て後ろを向いてもらい、30秒数えてもらった。僕と中村くんは二人別々に隠れるのは少し寂しいねということで二人で布団の中に一緒にこもって隠れた。30秒経った。Kくんが探しに来る。
Kくんが部屋に入ってきたのと同時に中村くんが急に「ここだよおおおおおおおお!!!」と叫ぶ。僕は笑う。こいつ何やってんだと中村くんを見るとモチモチの木の子供のような目をしている。Kくんが普通に布団をはぐ。見つかる。僕は非常に笑う。おしっこが漏れる。おしっこはパンツを越え、裏起毛のズボンを越え、中村くんの布団に到達した。こんにちはショーン・ベン。あなたは偉大なる冒険家。僕のズボンの股間の色が灰色からチャコールグレーにグレードアップしていた。中村くんとKくんがそれを見て爆笑する。中村くんもおしっこを漏らし始める。Kくんはうんこを漏らしたと言う。全員で爆笑する。おしっこもうんこも止まらない。笑いも止まらない。最高の日だった。あの日から僕たちは、かけがえのない友情を手にした。小学校から中学校まで、ずっと一緒にサッカーをした仲間だ。辛い時も苦しい時も、僕たちはあの日のことを思えばへっちゃらだった。
いつか、自分の子供にも語り継ぎたい。お父さんは、おしっこを漏らして生きてきた。おしっこを漏らすことと比べたら、不安や不満を漏らすことなんて大したことはない。限界になったら、なんでも漏らせばいい。泣きたくなったら泣けばいい。自分の気持ちを外に出せば、いつか君のもとに仲間が集まっているはずさ。
泣くほど好きです。
(泣いてないけど)