期待と裏切り

高校生のときに、期待と裏切りについて考えさせられたことがあります。

私は大好きなアイドルが亡くなったとき、学校で当時仲の良かった子に笑われました。

私は大好きなアイドルが亡くなって悲しいのに、彼女は戯けたように笑って「大丈夫？笑笑」と言った。周りの子は心配そうな顔をして大丈夫？悲しいね、と言っているのに。私は彼女が、私のアイドルが好きということに理解を示しているとずっと思っていた。でも違ったようだ。

アイドルが亡くなったのはもちろん悲しかったけど、それよりも友達に対する怒りの方が大きくなってしまいました。

私は裏切られた。あいつは何にもわかっていなかったんだ。あいつは私を馬鹿にしているんだ。

そして、このどうしようもない気持ちをある人に相談しました。

その人は私に期待と裏切りの話をしてくれました。

結論から言うと、私は仲の良かった子に期待をしていたがその期待が外れたから裏切られたと感じている、ということでした。

期待とはポジティブな響きを持っているように見えますが、一種の予想のことでもあります。予想というのは当たる時もあれば外れる時もあります。当たればポジティブに、外れたらネガティブな言葉になります。期待通り、期待外れ。後ろに付く言葉によってプラスだったりマイナスだったりします。予想なのでどれくらい当たるか外れるかは誰にもわかりません。

そして、私が彼女に持っていた期待というのはこの予想の中でも「99%当たる」という予想なんだそうです。ほぼ毎日顔を合わせて喋っていれば、たしかにお互いのことをなんとなくわかってきます。私も彼女も毎日のようにアイドルの話をしていたので、私は勝手に「あの子は私がアイドル好きなのをわかってくれる、アイドルに何かあれば共感をしてくれる」というほぼハズレのない予想、期待をしていたのです。

しかし予想は外れてしまった。

私の好きな人が死んでしまったから彼女は私を心配するだろう、これは期待です。

そして彼女は心配するどころか戯けて私を笑い飛ばした、期待は外れました。

誰かを期待(99%の予想)して、それが外れてしまった、私は悲しいし悔しい。彼女は私の期待を外した、これは裏切りだ。

私は彼女が裏切ったと感じています。彼女は私の気持ちを踏みにじり、馬鹿にした。悪いやつだ。

悪いやつ？

彼女は果たして悪いやつなのでしょうか。私は彼女に「私の大好きなアイドルが死んでしまったら一緒に悲しんでね」とは言ったことがありません。もちろん、共感してね、とも。

私は心の中で勝手に期待していただけです。そして、その期待は外れました。ここに彼女の意志があるのでしょうか。彼女が魔力かなにか、超次元的な能力を持たない限り意図して私の考えを変えることはできないはずです。

では一体だれが悪いのでしょうか。

だれも悪くありません。

強いて言うなら、勝手に期待した私が悪いのです。

だれが、彼女は私に共感すると言ったのでしょうか。

だれも言っていません。

これに気づいたとき、私にはどうしようも無いやるせなさだけが残りました。

だれも裏切ってなんかない。私が、そう感じているだけだ。