道は語る〜あの日の授業〜
住人
「道は語る」確かそんなタイトルだったと思う。
僕が美術専門学校のビジュアルデザイン科、1年の春の授業だ。
写真を撮る授業だった。
テーマは「道」
先生から説明があった。
「道といってもいろいろな道があります。晴れた日のアスファルト、細い細い路地裏、夕暮れの田んぼ道。心に残った道の写真と、そこに題名を付けて提出してください。」
どんな道を撮ろうか。ワクワクした。
後日、提出されたみんなの課題を黒板にずらっと貼り出して、講評会をした。
僕は、電灯に照らされた雨に濡れたアスファルトや、夜の赤信号の交差点を撮影して、「予感」や「迷い道」などのタイトルを付けて、ちょっと不思議な雰囲気を出した。
貼り出された作品は面白い作品がたくさんあった。
でも、群を抜いて、好評価な作品があった。
それは、何気ない黄金色の草の生える道を写した写真だった。
そこには、こんなタイトルが付いていた。
「今日は何して遊ぼうか」
僕は「すごい!!」と思った。
何気ない写真が意味を持った瞬間だった。
鬼ごっこ、缶蹴り、けんと…。
遠い日の友達とのワクワクした気持ちが、ふっと頭の中に蘇った。
写真にタイトルを付ける。
それだけ。
たった、それだけのことで作品となる。
意味を持って、どっしりとした存在感を表す。
なんだか不思議で、その日の僕にとって衝撃的だった。
ーーーーーー
あの日の授業から何年経ったのだろう?
9年ほど経っただろうか。
その時に教えてくれた先生は、今は違う会社にいる。
僕の勤めている会社とも取引があって、たまに電話がくる。
「ろっくん!!」
なんだかすごく懐かしい思いがする。
あの日の授業は、今の僕の中に残っていて、今の僕の創作を助けている。
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