p12:私が私とデートした日の話

住人

9時30分。
セットした最後のアラームで目が覚める。
若干の寝坊である。

休日くらいゴロゴロすればいいのに、と思う人もいるかもしれないが
私の休日は、出かけるために存在するのだ。何の予定もない日は、月に一度くらいでいい。

ありがたいことに、ここ2ヶ月ほど、休日は人と一緒にいることが多かった。

マッチングアプリで知り合ったメンズ。
幼馴染。
中学の同級生。
仲良しの同期。

いろいろなところに行って、初めての出会いもあって
私にとっては全部新鮮な経験だった。

とはいえ、そろそろひとりで自由に使える時間がほしいなと思い立って、今週末は人に会う予定を入れなかったのだ。

そう、今日は私が私とデートする日。

ラフな格好で、サコッシュとチェキを持って
家を出る。

まずは、身体をほぐす。
予約した新宿のマッサージ屋さんで60分のマッサージをしてもらった。

フリーターをしていた頃はお金に余裕はなかったので30分のマッサージが限界だったけれども今は自由に使えるお金がある。「60分」のマッサージに迷わずお金を払えるのだ。

よく喋るお姉さんによる、60分間のマッサージ。会話が空白になったり、ゆっくり話したりを繰り返しながら、ほぐされていく。

このマッサージ屋さんは、長野にいたときから時々利用していたチェーン店で、施術後に出してもらえるハーブティーがささやかな楽しみだ。

ルイボスとジンジャーがブレンドされているもので、ジンジャーが入っていてスパイシーなのに、後味が甘い。

ルイボスとジンジャーに集中したいのだけれどお姉さんが話しかけてくるから、ルイボスとジンジャーに集中させてほしいなと思いながら相槌を打った。

そのあと、病院に行った。13時過ぎ。
実は健康診断に引っかかってしまったので、再検査へ。

抗生剤をもらった。良くなるといいな。

14時30分に美容院を予約している。病院が早く終わって、すこし時間が余った。
ずっと気になっていた日本茶ミルクティー専門店に行った。

タピオカだと思っていたものは黒糖わらびもちで、なんだタピオカじゃないんだと思いながら注文した。

タピオカよりさらにもちもちでやわらかくて幸せな味だった。なんだタピオカじゃないんだ、って何度も言われてるんだろうな。ごめんね、また飲みます。

14時30分。表参道の美容院へ。
松本で何度かお世話になった美容師さんが教えてくれた美容院で、ずっと気になっていた。

担当してくれた美容師さんは、愛想がないわけではないけれど雑談をまったくしない人だったのが新鮮だった。

髪質や生え方を吟味して黙々とカットしていく。話すのは髪のことだけ。着実に仕上がっていくボブヘアを見て、いわゆる職人肌なんだろうなと思った。

男性の美容師さんは気張るので、これくらいの方が楽かもしれない。

16時。また新宿に戻って買い物をした。
気になっていたGUのコスメ。通りすがりでみつけて気に入ったリング。

上京してから1度も食べていなかったクリスピークリームドーナツ。

やっぱりおいしい。
このドーナツには、大学受験のときに父と探し回った思い出や昔付き合っていたひとが帰省したときに買ってきてくれた思い出などがある。

今や甘い思い出ばかりではないけれど
このドーナツは裏切ることなく甘いな。

レシートには、当たりがついていた。

これにて、今日のデートはおしまい。

やっぱり私は人と会うのが好きだけれど
人と会わない時間も時々つくって、こうやって自分を可愛がってあげようと思った。

鋭気を養ったところだし、明日からまた、仕事がんばるぞ!

▲▼

ここからは、現在の私のはなし。

1年前、おどりばで文章を書き始めたころ
私は私の価値を探すので必死だった。

すごい人になりたかった。

今の私は、すごい人ではないと思う。
就職した会社は個人の裁量がとても多く
集中力を持続されたり計画的に進めたりするのが苦手な私にとってはかなりハードで
ひどい時は毎日終電帰りになったりする。

テレビに出たのがきっかけで有名になったわけでもなく、
なにか発信したものがバズるわけでもなく
結局日々の仕事をこなすのでいっぱいいっぱいで

今は、ちょっと頑張ってる普通の人間だと思う。

だけど、長野駅前のサイゼリアで
泣きながらおどりばの1ページ目を書いていたあの日の私に言いたい。

1年後の君は、別にすごくはないけれど

親に頼らなくても暮らしていけて
親友みたいな同期もいて
癖強い上司も何だかんだで助けてくれて
営業先でお客さんと仲良くなる楽しさだったり、提案が好感触だった達成感だったり、つらい仕事の中にも楽しさを見い出せていて
初めて見る場所や景色にいつもドキドキしていて

まだまだ自信のないところは沢山あって落ち込むことはあるけれど、すぐに立ち直れるチョロい自分が好きで

あんなに怖がっていた東京で、今が一番幸せ!って笑ってるよ。

すごい人になりたいだなんて
泣いてる私はもうここにはいない。

すごくなくても私はかわいいし
すごくなくても幸せなんです。

時にはがくんと落ち込むことはあると思うけれど
今が一番幸せ。を更新し続けたい。というのが新しい目標。私が幸せにならないと、私は大切な人を誰も幸せにできないと思うから。

すごい人にならなくたって、人は幸せになれるし
幸せでいていいんだ。

すごい人になりたくて始めたおどりばでの執筆
すごい人になりたいと思わなくなったのは
ひとつのゴールなのかなと思っていて

もしかしたらこれがやめどきなのかなあ、なんて思ったりもしたけど
やっぱり私はこの場を借りて、私の気持ちや日々思うことを伝え続けたいと思う。

生きることは幸せになるための戦いだから。まだまだ、書くことはたくさんある。

またマイペース投稿になってしまうかもしれないけど、これからも読んでくださったら嬉しいなと思います。

ひとまず。

ここまで応援して下さっていた読者のみなさまに、愛を込めて御礼を。

1章 fin.

うめこ

すごい人になりたかった人です。

プロフィール

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  1. ゆうりゆうり

    すっごーい!まとまってるというか、いい文章だよねえ、本当に。引き込まれるし、読んでてワクワクするし、うめこちゃんの気持ちも入ってくる。
    そしてうめこちゃんが元気で良かった✨
    何度も言うけど、わたしにとっては、うめこちゃんはすごいひと。
    日本茶ミルクティー専門店気になる~わらびもち好きだからいきたいな、行ってみるね。
    なんか可愛さ増したよね!元々可愛いけど、更にってこと!だいすきよ!これからのおどりばも楽しみにしてるね❤

  2. にこ

    素敵な文章を書く人だなーと読ませていただきました。
    すごい人にならなくても幸せって分かってるつもりでもしんどくなる時があります。
    この文章に少し気持ちを楽にしていただきました。
    私みたいなものからしたら自分の気持ちを言葉にして発信しているのってすごい人にカテゴライズされるんですけどね(^^)
    文章からも貴方の内包する魅力が溢れていて、すごい人であることが伝わってきました。
    これからも気が向いた時にでいいのでこうやってお話聞かせてください。