新宿になりたい。

9月7日・日曜、新宿に1泊2日の小旅行。目的は高校時代の友人が組んでいるバンドのライブを観るため。彼は現在、長野を離れ、沖縄で生活しているので会える機会はこんな時しかない。昨年秋に彼が来信した際、会えそうで会えずニアミスしていたのも今回の新宿トリップの伏線となった。
当日、朝から新幹線に乗り込み、10時前には新宿の地に着いていた。さすがにかわいい子が多いなーと雑踏をbra-bra。せっかくだからと恐怖の街・歌舞伎町に繰り出す。早速、洗礼を受ける。ち、治安が悪い。キャッチが多いし、落ちているゴミの量がすごい。若者たちが地べたに座り込んで、たむろしていた。これが現在の歌舞伎町というヤツかと驚く。お昼ごはんを食べたくてさ迷ったが、歌舞伎町の汚れっぷりに怯んで、「この街の飲食店には入れない」となって結局、歌舞伎町の端っこのサイゼリヤで簡単な食事。白ワインをデカンタでひとり飲み。つまみを頼んで合計1500円くらい。安く済んで良かったが、せっかく新宿来たのにという気持ちになる。それで前々から興味があったメイド喫茶に行くことを決心する。
いざ行ってみて店頭で入国(=入店)するのに躊躇したが酒が入っていたので、思い切って立ち寄ることができた―――先に書くと1時間で5000円足らずで楽しめたのだが、不満足。従業員さんがメイド服を着ているというだけで、ほかはほとんど普通の飲食店と変わらない。こちらから積極的にメイドさんに絡んでいけば良かったといえばそれまでだが、好みのメイドさんがいなくて、ひとり寂しく飲んだだけ。話し相手になってくれる長野駅前のガールズバーの方がまだ楽しめるな~というのが感想デス。(とか言いつつガールズバーやメイド喫茶には2、3回しか行ったことがない。人生勉強のためにもっと行ってみたいのは正直な気持ちとはいえ、渋沢栄一が惜しいので行きません)この後、タワレコやニューエラショップに寄ったりして、ホテルへチェックイン。受付のお嬢さんがかわいらしく、付き合いてえ~と心で叫んだが、クールに装った。(けれど、決済の際、PayPay支払いで手間取って見事なおじいちゃんっぷりを披露。お姉さん、やさしく接してくれて余計に惚れた!)ホテルで友人のバンドILLUMINATIのTシャツに着替えて準備万端でライブハウスへと向かう。いよいよヤツとの20年振りの再会を果たせると思うと妙に緊張してしまう。嬉しくても人は緊張するんだな。開場時間にライブハウスの地下一階に突入。早速、ILLUMINATIのニューデザインTシャツと、配信でしか聴けていないニューアルバム『BLACK RIVER』のCDを購入。メタルやハードコアのバンドが中心に出るイベントなので、両腕にイカついタトゥーを入れている人、多々。ビビりながらも「こんな見た目だけれど、みんないい人だ!」と暗示をかけて物販のお兄さんに「K-9の友人なんですが、彼います?」と訊く。すると気さくでもなく、固くもなく自然な笑顔でヤツがやって来た。その瞬間にリアルで会えていた頃の空気感が戻った。
彼のことを少し話すと、高校時代のクラスメイトで釣り部だった男。上京後も酒を飲みに行くような腐れ縁。だが突然ある日「沖縄行ってくるわ」と言って、そのまま沖縄に住み続けているヤツである。SNSで近況は知っている。仕事をそっちのけにして釣りをしているイメージ笑。ガタイが良くてビジュアルはロンパーに髭面。なかなかのイケオジになっている。久しぶりに聞いたヤツの声はしゃがれていて渋かった。変わったのはそれくらい?
この日のイベントではかっこいいバンドばかりに出逢えてそれも収獲。そんな中、トリがヤツのバンドILLUMINATI。ステージでデスボイスで叫ぶその姿は神々しく美しかった。さっきまで話していたヤツとは別人。どちらもリスペクトするしカッコいいが、同じ人物とは思えない。迂闊にも歌っている彼に憧れてしまった。柵の上を危なっかしく歩いたり、縦横無尽に飛び跳ねたり、ステージから降りてフロアの真ん中で歌ったり、興奮した観客に担がれてフロアを泳いだり、めちゃくちゃな手法でライブを盛り上げる。バンドの演奏が強固かつタイトでソリッドだったので、よりヤツのパフォーマンスは力強く映った。そして目が合った観客に突撃していき、抱擁するという奇行にわたしも巻き込まれる。抱きついてきた彼はもちろん汗だくだった。そのオーディエンスを無理やり巻き込んで盛り上げるというやり方に彼の生き様を感じさせられた。私生活でもこうやって屈託のない笑顔で見ず知らずの人をも巻き込み始まっていった沖縄の暮らしなのだろう。
今回の再会でびっくりしたのは彼の友人の多さだった。少なくとも高校時代のヤツはわたしと同じく友人が少ないタイプだったのに。その上、クセのある友人ばかりで驚かされた。わたしは人見知りで口下手だから、ヤツにまたしても嫉妬。羨み、妬み、強く憧れた。
ライブ後、打ち上げに参加させてもらった。ILLUMINATIメンバーと主催したバンドマンたちの計10名ほど?(全員TATOOあり)0時~2時までの短い間だったが、貴重な体験となった。ステージから降りたヤツは高校のクラスメイトでありつつ、好きなバンドのフロントマンという憧れの人物でもあった。ライブ前とは違う感情で接してしまう。エキサイトした、時間があっという間に過ぎ去った。メイド喫茶でのがっかり感も帳消しになるほどの大満足。なので打ち上げ後も心の興奮は治まらず。実はILLUMINATIと同じホテルの相部屋にベッドを確保したのだが、睡眠薬を飲んだというのに、2時間過ぎても眠気は襲ってこず、寝ることを諦め、始発の新幹線で帰ることを決めた。冒頭の写真はヤツに書き残した手紙だ。(28時すぎに書いた文章なので薄っぺらい内容になってしまっているが……)。
この日(8日) 、長野に帰ってもあまり眠れず、3時間睡眠がやっと。夜になってようやく強烈に眠くなりその後、11時間睡眠を摂れたが、次の日の仕事に悪影響だったな。睡眠って大事ネ! そんなわけであれから1週間が経った現在。(9月15日・月曜)まんまとILLUMINATIにハマってしまった。もうヤツはヤツではない。勝手に神格化。とか言いつつ、実は元から憧れていたんじゃね?と思い直す。ヤツみたいに「全員嫌い」とクラスメイトを憎んでみたかった、ヤツみたいに女の子に積極的にアタックしたかった、ヤツみたいに対等な気持ちで米軍基地の兵士と話せるようになりたかった、ヤツみたいにふらっと南国へ行って永住してみたかった。でも、いくらそう思ったところでヤツにはなれない。結局、わたしは〚なかがわよしの〛にしかなれねえんだ。やっぱりそこに着地するんだ。ということでこの小旅行の記事を閉じる。《了》
vbsi87