【017】ワクワク
日曜の黄昏時と聞いて、何を思い浮かべるだろう?
私は、何から何まできわめて平均的な昭和生まれのサラリーマンを思い浮かべる。
同じように思い浮かべる人は今、どれほどいるだろうか。
子どもの頃、車のラジオから流れる「あ、安部礼司」という番組がなんとなく好きだった。
ただし、この番組で流れてくるのは昔の曲ばかりで、親世代は知っていても私が知っている曲はあまり流れない。
それでも、聴いているだけで不思議とワクワクした。
それは登場人物が面白かったからなのか、はたまた番組冒頭で必ず「今までなかったワクワクを」という日産自動車のキャッチフレーズが叫ばれていたからなのかは分からない。
サラリーマンの生きる姿を描いたラジオドラマを、まだ子どもだった私が満足に理解できるわけもないので、やっぱり雰囲気が好きだったんだろう。
しかし日曜の17時が近づくと、進んでラジオを聴いていたことは覚えている。
まだ見ぬ大人の世界を、ちょっとだけ覗き見しているかのようなワクワク感がそこにはあった。
もう少し大人に近づいたころだろうか、「人生がときめく片づけの魔法」という有名な本を読んだ。
その中で、著者のこんまり先生はモノの片づけについてこう語っている。
触った瞬間に「ときめき」を感じるかどうかで判断する
https://konmari.jp/method/
片づけの極意は、「何を捨てるか」ではなく、「何を残すか」。モノを一つひとつ手にとって、触れてみることが重要です。体の反応を感じて、ときめくモノは残し、ときめかないモノは手放す。こうすることで、自分にとって「持っていて幸せになる」「心がときめく」モノだけに囲まれた生活を手に入れることができます。
これを読んだ私は、「ときめかない」という理由で幼かったころの思い出の品を独断で捨ててしまった気がする。
今となっては、それが何だったのかすら思い出せない。つまり確実に断捨離できている。
親にはなんで捨てちゃったのとか言われたような気もするが、捨てて正解だったのだろう。
しかし、「ときめき」とはなんだろう。
辞書で引くと類義語同義語も多くあり、その中には先に述べた「ワクワク」もあった。
「ときめき」と「ワクワク」は、ほぼ同義なのだろうか。
ところで、谷川俊太郎先生の詩にも「ワクワク」という詩がある。
学生時代、文化祭で合唱部の歌う曲を探していたときに見つけたのがこの「ワクワク」で、そこで初めてこの詩に出会った。
恋をすりゃ手紙書く
手紙書きゃ返事くる
返事くりゃデートする
デートすりゃキッスする
ワクワク ワクワク哀しけりゃよっぱらう
谷川俊太郎「うつむく青年」より一部抜粋
よっぱらや歌うたう
歌うたや泣けてくる
泣けてくりゃ笑っちゃう
ワクワク ワクワク
ワクワクという感情を言葉にするのは、なかなか難しい。
しかし谷川先生の紡いだこの詩には、色々なワクワクが詰まっている。
読んでいるだけで、なんだかワクワクしてくる。
そんな詩に惹かれて、この曲を選んだことをよく覚えている。
でもなんだろう、その当時に比べて、今の自分はワクワクすることが減ってきているような気がする。
そういえば、これが私の22歳最後の「おどりば」だ。
歳を重ねると1年が早くなると言われるが、確かにそんなような気もする。
某チコちゃんは、その理由を「人生にときめきがなくなったから」だと言っていた。
しかし、自分はそうは思わない。
だって、23歳を迎えることに、ワクワクしてたまらないのだから。
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