【012】ととのう。
サウナが流行っている。
「ととのう」という言葉がサウナ用語だということを、私はなんとなく知っていた。
だが、そもそも温泉に行くことも少なく、ましてサウナに入ろうとまで思うこともなかったので、これまでに「ととのう」経験はなかった。
しかし先日、職場の先輩と一緒に温泉に行った際、私はサウナの魅力を知ることとなった。
その日は朝10時から先輩とスポッチャ的なもので遊んでおり、いっぱい動いたので併設の温泉に行こうということになった。
しかもその温泉には岩盤浴の施設もあるとのことで、まずは岩盤浴を体験した。
中でも、霧に包み込まれる部屋は圧巻だった。まるで火事のようで、どちらかというと恐ろしかった。
それはそうとして、その後は普通に温泉に入り、終盤に満を持してサウナに入ることとなった。
そういえばサウナの中にはテレビがついていることが多い。ここもテレビがあり、NHKを映していた。
時間は17時58分くらいだっただろう。大相撲の結びの一番が終わったところだった。
私は目が悪いので、サウナ専用の独特な時計がはっきりと見えない。
そこで、テレビの時報を頼りにして5分ほどしたら出ようと思っていると、時刻は18時に。
すると、中央のサウナストーンの上にある管から、水が出てくるではないか。
ジュっという音とともに、サウナストーンの目の前に座っていた私を熱が襲う。
まさか、これ、「ロウリュ」…?
ロウリュってすげー熱いヤツじゃなかったか?と思ったのも束の間。
頭上にある空調がすさまじい音で稼働し、熱風が吹き荒れる!
空調「ゴゴゴゴゴゴゴ!!」
あつい「わたし!!わたしわたし!!わたし!!!!」
どうやらこのサウナ、毎正時に、オートロウリュが行われているらしい。なんてことだ。
1分ほど続いたロウリュの洗礼が終わると、もうなんか時間はどうでもよくなった。
サウナに詳しい先輩にあわせて10分くらい過ごしてから外に出ると、水風呂に入る。
クソ寒い日にプールに入ったような感覚が襲うが、数十秒ほどすると寒さが気にならなくなる。
そういう現象があるらしい。
そして1分少しほどして水風呂から出ると、そのまま外気浴に向かう。
身体が芯まで温まっているせいか、寒さはあまり感じない。
そして椅子に座っていると、なんだか頭がボーッとして身体がフワッとする感じがする。
どうやらこれが「ととのう」ということらしい。
私はタバコを吸ったことが無いが、きっとよく聞く「ヤニクラ」もこんな感覚なのだろうと思った。
確かにこれは気持ち良い。病みつきになる人がいるのも何となく頷ける。
いずれ危険性を指摘されそうな気もするが。
とにかく、「ととのう」というのが、サウナに入って気持ち良いくらいだと思っていた私にとっては、かなり驚きの体験だった。
私は面白くなって、先輩を誘って2回目の「ととのう」にもチャレンジした。
しかし2回目は、何が足りなかったのか「ととのう」ことはなかった。うーむ、なかなか難しいのだろうか。
2022年、22歳にして人生初の「ととのう」経験だった。
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