p17:揺れるこころの、かけらをあつめて
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最近よく夢を見る。
夢の内容はほとんど覚えていないけど
生ぬるい風の感触だけがいつも残る、
そんな感じの夢ばかり。
夜は「がんばって」眠る。
朝起きられても胃の中が気持ち悪くて二度寝する。
結局毎日10時間くらい眠って、スマホゲームやら
ネットサーフィンやらしているうちになんとなく一日が終わる。
毎日、毎日
微かな「やらなくちゃ」が積もりに積もっていく。
分かっている。分かっているけど。
なりたかった自分からどんどん遠ざかっていく。
周りの人は、ゆっくり休めばいいよ、
そのうち動けるようになるよ
と言ってくれる。
そんな風に思えたら苦労しないけど
そうだよな、それしか言えないよな、と思う。
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でも。
長野に戻ってきてから1ヶ月とすこし。
ほんのわずかに変化を感じている。
「こころが揺れる瞬間」がすこしだけ
感じ取れるようになってきた気がする。
あたらしい服が届いたとき。
あたらしい服に袖を通したとき。
その服が似合っていたとき。
マスカラを塗ったあと、左目がちゃんと二重になっていたとき。
好きな景色を、好きなものを、うまく切り取れたとき。
コーヒーの香りにつつまれながら、おいしいケーキを食べたとき。
人と「語れた」とき。自分の気持ちを伝えられたとき。
恋人に会える前の日の昼間。恋人に会う日の朝。
恋人の笑い声を聞いたとき。恋人の寝起きのおはようを聞いたとき。
家族と食べる焼肉の一枚目の味。弟のやわらかくてつるつるのほっぺをつまんだとき。
恋が生まれそうな瞬間に立ち会ったとき。甘酸っぱいうすももいろの空気。
こんな気持ちを、文章に残せたとき。
私のこころは、すこしだけ揺れる。
揺れたこころが見えたとき、
まだ、人間として腐ってないぎりぎりのところにいる気がした。まだ、大丈夫な気がした。
私は、生きるのが下手くそだ。
だからいつもつまずいていて、今回も、ああまたか、と思う。
失敗したことばかり考えてしまうし、失ったものにばかり目を向けてしまう。
だけど何度でも立ち直ってきたのは、生きづらくてもネガティブになってしまっても、揺れるこころのかけらを拾い集めることができたからだと思う。
私はまだ、ときどき東京での生活を思い出しては
寂しくなって悔しくなって、泣いてしまう。
実家の埃を吸って体調を崩しているしとても寒いし、長野に戻ってきてよかったって、ぜんぜん思えていないけど、何にも前進できていない気がするけど
だけどあきらめたくない、と思う。
私の人生だめだって、あきらめたくないんだと思う。
だから、悲しいこと失ったものを数えるばかりではなくて、揺れるこころのかけらをあつめて、時間をかけて、見つけたい。
なりたい私のことも、これから進む道のことも。
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