詐欺に遭った。
ネット通販で墓穴。25000円。≪バッカじゃないの≫っていう低レベルな策にヤラレて。きっと悪徳集団たちは嘲笑しているに。言い訳するなら、退職するほどメンタルがヤラレてたタイミングで、精神的に何かを正しく判断できる状態ではなかったんだよね。おじいさんやおばあさんも、思考能力が落ちるから、罠にわざわざ引っかかるんだなって、身を持って経験。だから、
気をつけなさい!
って、わたしが言っても説得力ゼロだな。せいぜいカロリー80%オフのチョコバーでも食っとけよ。それで満足しとけよ。
確かに嫌な感じはしていた。なぜそこでストップしなかったのか疑問に思うこともなくはない。「お振り込みまで3日以上かかる方はお伝えください。新しい口座をお伝えします」という文言がメールの書面にあって、≪詐欺かも……≫と予感したんだ。そこでまずかったのは≪かも……≫と思ったことで、正常な精神なら、間違いなく≪詐欺だ!≫って正気に戻れたはず。あれは自殺未遂みたいなものだったのかもしれない。自ら不幸になろうとしているOLみたいな。惨めな自分に溺れるような。うまく例えられないや、悔しくて。
まさかね。
そんな言葉が脳の片隅にあった。それに購入したのはマニアックなエフェクターだったし、ホームページの品揃えもツウなセレクトであったから、簡単に信じ込んでしまった。≪こんなレアなエフェクター、ネット詐欺集団が取り扱うわけがない≫とか、≪数万円のためにこんなに品数豊富なホームページを作るわけがない≫と一方で思ったり。信じたかったのかもしれない。わたしは壊れていないって。でも、まぬけなあの子はわたしだった! そう、自分がそんな目に遭うとは思っていなかったのが、敗因。って勝ち負けじゃねえか。
不思議と怒りはない。悔しいけど。最初は≪もしかして?≫という不安感。次は≪やっちまった!≫という情けない思い。購入から1週間してようやく、騙されたことに気が付き、警察に被害届。「どの時点で詐欺だと思いましたか?」と訊かれたのが、超*恥ずかしかった。「連絡がいつまで経ってもないので、電話したんです、ホームページの番号にかけたら≪現在使われておりません≫って……」。刑事さんは被害届を修正するために3、4分離席。取調室とドアーに書かれていたその部屋は殺風景で、ほぼ何もなかった。机と椅子2脚、電源の抜かれたプリンター、長野県地図とカレンダー。それ以外なかった。日当たりは良かった。白かった、明るかった。わたしの心はくすんだ空だった。戻ってきた刑事さんは、わたしを慰めてくれた。
その後、八十二銀行へハシゴして、相談。窓口の若い女性行員さんが親身になってくれて、≪わたし、おじいちゃんだな≫って、自己認識。女性行員は振り込んだ先の横浜銀行和泉支店に電話することを勧めた。それでtel。でも呆気なく「もうすでに全額引き出されております」ってなぜか謝られて。それで、ようやく怒りが湧いて来たのだけど、その矛先は、よりによって八十二銀行の女性銀行員に。一縷の望みを託したわたしがまぬけだったんだけど。「とどめを刺すような電話をかけさせるんじゃねえよ」って腹の底では。
それは認めたくない自分の心の醜さ。まんまとヤラレた詐欺集団のずさんで周到なやり口。結局は金か?! 大切なお金を取られて怒り、大切なお金を奪い取りほくそ笑む。金、金、金。あの金を鳴らすのはあなたでしたか。なんだか、≪世の中、つまりは金とセックスだけだ≫という現実を突き付けられた気がしてならない。そんな人生なんてクソだな。当然だな。そんなつもりで生きてねえよ。騙されても、奪われても、わたしには≪家族≫が生きる意味。≪小説≫が生きる価値。そして≪生きる≫そのものが生きる理由。
うめこさん@7号室の名言「全部おどりばにしてやるからな」の精神に乗っ取り、今ここに、恥と失敗を、おどりばした。被害届を出し、銀行へ相談し、もう一方の銀行に電話して首をはねられたが、むしろ清々しい。ここに記してさらに涼&涼。友だちに詐欺に遭ったことを告げたら「実はおれも……」って5万円の話をしてくれて、友情が芽生えた。良かったのかもしれない、騙されて。こうして原稿を書けたし、小説のネタになるだろうしな。ただ怖くて妻には内緒。「バッカじゃないの」って言わないことは知ってる、恐妻家。
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