親父へ
1ヶ月ほど前、とある夢を見た。
僕はほとんど夢を見ないほうだと思うし、見たとしてもすぐに忘れてしまう。稀に覚えていたとして大抵は悪夢。嫌な汗を掻いて目覚める。
ご多分に漏れず、この日の目覚めも清々しいものではなかった。ただ、悪夢、と言ってしまうのは憚られるというか、でも、悪夢であったほうが受け止めるのは容易であっただろう。
思ってもいなかった。親父に「ありがとう」と言う夢を見るなんて。
4月。最寄り駅から徒歩25分の、散らかった1Kで荷物をまとめていた。15歳から5年間の寮生活に加え、社会人になってからもシェアハウスに住んだり、男2人で空き家に暮らしたりしていたので、手狭な空間で過ごすことに慣れていたのだけど、2年も一人暮らしをしていると、案外モノも増えていくものだ。片付けには苦戦することとなったが、2人の家財道具を足し合わせれば大抵のモノが揃っていた。僕らはそれぞれ引っ越しをして、今よりもずうっと広い部屋で暮らす。2人じゃなくて、3人で。
もう少し遡って、昨年の9月。彼女とは前職で出会ったのだけれど、正直、そんなふうには意識していなかった。僕よりも歳上で、いろんな経験を積んでいて、気配りが上手で、仕事ができて、とても綺麗な人だ。いつも優しく接してくれていたけど、僕にはすごい人すぎて、どこか遠い存在だと思っていた。ときどき食事にも誘ってくれて、それも「僕のような若造にまで手を差し伸べるとは聖人…」なんて思っていたのだけれど、まさか、であった。
彼女にはまだ小さな子供がいる。当時2歳(8月で3歳になりました)の元気いっぱいな男の子。彼女の家に遊びに行くと、走って玄関まで迎えに来てくれた。子供は好きでもあまり接した経験のない僕には、戸惑いもあったけど、小さな小さな彼のほうから受け入れてくれたように思う。
知人の子供を見ては「かわいいね」と言う距離感から、子育て、という位置に動いてみると、いろいろな発見がある。こうやって言葉を覚えていくのだな。イヤイヤ期ってその名の通りなんだな。噂通り子供というのは夜泣きがひどくて眠れないのだな(いまは落ち着きました)。小さな身体でも、ちゃんとなにかを感じ取っているんだな。
そうして3人の時間を重ねた、とある夜。子供が僕の手を握ったまま眠りについたのを見て「一緒に暮らしたら」を考えるようになった。僕のほうから提案しておきながら、やっぱり気持ちが揺らいでしまって、本当に迷惑をかけてしまったけれど。3人で暮らしはじめて、4ヶ月半くらいが経った。
僕は、パパ、じゃない。現に彼からは「はるちゃん」と呼ばれていて、保育園の先生からだって「はるちゃん」だ。でも、保護者ではある。彼にとって、僕はなんなのだろう。僕をどう認識しているのだろう。そんな不安に近い感情を片隅に抱えながら、一緒に生活している。パパ、ではないけれど、きっといまの状況が、僕にこの夢を見させたのだろうな。
親父。子供を育てるというのは大変だな。俺はまだ経済的に子を養えているわけでもないし、全然遊んでやれてもいない。楽しくしてあげることもできない。俺は正しくあの子を愛せているだろうか。家族のために生きれているだろうか。
あるときから家がゴタゴタしだしたせいで忘れていたけれど、あなたは俺をよく遊びに連れていってくれていたな。海だって毎年行っていたし、いつも車で遠くに連れて行ってくれたな(よく飛ばし過ぎで捕まってたけど)。あなたの運転する助手席が好きだったな、そういえば。3歳の頃の記憶なんてないけど、うろ覚えながらやったらキスされてた記憶があるよ。ちゃんと愛して、育ててくれていたのだろうな。それも、俺と兄貴2人を。いまなら、それが当たり前でないことがわかるよ。
SNSは見ているみたいだから、きっとこれも読んでいるのだろうな。そういうことだ、親父。あなたのすべてを許しきれてはいないから、まだまだ受け入れ難い部分もあるけど、まあ、感謝してる。柔らかい表現で言うのは、文章だとしても照れくさいな。
いつまでも言えるものではないのはわかっているけど、面と向かって言うには、まだ噛み砕けていない。もう少し時間をくれ。とりあえずこの場で伝えます。
ありがとう。
3人で暮らす、を有言実行されたのですね。
想像から、行動を実際に起こすことができる人って、なかなかいないので、はたこしさん、すごいと思います。
実際に子どもを「育て上げる」ということをしてみると、想像以上に大変なんだろうなと思います。
でも、大変さ以上に「嬉しさ」とか、言葉で表現出来ないような感情を色々与えてくれる存在でもあると思います。
はたこしさんの優しさとか、雰囲気とかで、子どもさんも「この人なら大丈夫!」って思ったからはたこしさんを受け入れたのかもしれませんね。
お父様への想いも、今はまだ複雑でも…いつか、噛み砕いて消化出来るといいですね。
わたしも父や母、弟にかなり迷惑をかけてきたので、反省しなきゃな、とかもっと優しくしていこう…と思いました。
はたこしさんの彼女さん、とてもステキな方ですよね。以前お会いしたことがあるのです。彼女さんはわたしのことを解らないかもしれませんが、(あ、でも記憶力すごい方なので覚えてくださっているのかもしれませんね)何卒よろしくお伝えください。お三方の幸せを心から願っております。
ありがとうございます。本当に手探りの日々を送っているので、そうした言葉をいただけると励みになります。
両親にはいまの暮らしをまだ理解してもらえていなくて、現状は疎遠状態といった感じで、僕もそんな親に対してなにかできているわけでもないのですが、
子供と接するなかで昔のことを思い出したり、ちゃんと育ててくれたんだなあと思うようになりました。
そういう言葉は伝えられるうちに、伝えていかなければいけないなあ、と自戒です。
彼女はゆうりさんのこと、ちゃんと覚えていますよ。むしろ彼女のほうから「ゆうりさんって知ってるよ」と話してくれました。おどりばも読んでいるみたいです。
拝読していて、
「きっと大丈夫だよ、はるちゃん」という言葉がふっと浮かびました。
たぶん、ハタコシさんの不安に近い感情に反応したのだと思います。
ごめんなさい、うまく言葉にはできなくて、
コメントに残そうか迷ったんですけど、
でも、そう思ったということをお伝えしたくて…
子供さんのことも、お父様のことも、きっと、きっと大丈夫です。
大丈夫、だと思っている自分もいながら、やっぱりダメなんじゃないかなあ、なんて思ってしまったりを繰り返しています。
とはいえ、こればかりはもっと長い時間を積み重ねていくなかで大丈夫になっていくものかなあ、とも思ったり。
まあ、あまり考えすぎず日々に向き合っていきたいです。ありがとうございます。
父や両親の件については…こっちのほうがどうしたらいいかな、って感じなのですが、
うん、きっと大丈夫でしょう。大丈夫。
読みました。
父親に手紙を書いたことは、多分ないです…
なので自分が実際に手紙を書くときを想像出来ました。
自分は父とは上手くできていそうでそうでないと思います。
色々振り返りながら、書きたいと思います。
渡すのはいつになるかな~ 結婚するころかな
これが手紙というかは微妙ですが。笑
正直、親に向けてなにかを書くとすれば母が先だと思っていました。
父となると、余計どこかこそばゆい感じがありますが、
ちゃんとそういう機会を持てるといいですね。