わたしだけの卒業式。
ここに、ずっと書きたかったのに書けなかったことがあります。
それは、父親との関係についてです。
私、実は実父ととても仲が悪くて。
いえ、正確には、「仲が悪くなっていた」でしょうか。
それでもこちらに書くことができなかったのは、文字として、記録に残るものに父を悪く書くことに抵抗があったからです。
幼い頃、私は父にべったりでした。
母がかまってくれない分まで、父は私を溺愛してくれました。とても仲のよい親子でした。
何かに悩むと、なんでも父に相談しました。他所の人に父に似ていると言われるのも、私にとっては嬉しい事でした。父が大好きで、誰よりも信頼している大人でした。
でも、大学に入るとその状況は一変。
父は、大学生になって家を空けることが多くなった私を、怪しむようになりました。
おそらく、私の実母の姿と重なって見えたからだと思います。
母に裏切られた記憶がよみがえるのか、父は、私の目を見ながらも、私ではない相手に怒鳴っているように見えました。それが苦痛でたまりませんでした。
私たちの間には、徐々に溝ができていきました。最初は小さかったひずみが、気づけば取り返しのつかないほどに大きくなり、私はこの状況をなんとかしなくては、と思うようになりました。でも、父の怖い顔を目の前にすると、今更何と言ったらいいのか、そもそもケンカをしているわけでもなく、一体なにをどう謝ればよいのか。それに加えて、父に浴びせられたたくさんのナイフのような言葉を思い出し、なぜ私だけが謝らなくてはならないのだという気持ちにも駆られました。そうこうしているうちに、謝るタイミングは、どんどん、どんどん、消えていくばかり。
私たちの間には、大きく冷たい壁ができていました。どちらも相手に近づくことをやめました。私はもう、この関係を諦め始めていました。
そんなときでした。新型コロナウイルスの蔓延で、家にいるしかない日々が続きました。
私にとって、それは父との沈黙の時間が長くなるということ。
父とは、ここ2年ほど、心から会話をすることは一切なくなっていました。
すると、やっぱり私たちは衝突しました。仲の悪い二人が、同じ空間に長時間いるのですから当然です。
父との激しい口論の末、父は、私とはもう縁を切る、出ていけとすら言いました。私はもう、そうするしかないのだろうと思いました。
でも、その話の仲裁に入ったのは兄でした。
普段は滅多に泣かない兄が、目に涙を浮かべながら、
「母ちゃんもいなくなっちゃったしさ。確かに今は○○ちゃん(現在の義母)たちもいるけどさ。俺は、やっぱ、血のつながってる家族が3人であることは、悪いけど変わらないと思ってる。血のつながってる家族は、もう俺たち3人だけなんだよ。だから…ふたりには仲良くしてほしい」
その言葉で、頭に血ののぼっていた私たちも、ようやく冷静になりました。
私、本当は。
ボロボロ、と涙が出ました。私は、父と、もう一度やり直したい。
精一杯の勇気をだして、父に本音を告げました。もしかして、また怒られるだろうか。
そう思いながらも顔をあげると、父はボロボロ泣いていました。
私たちは、ようやく仲直りをしました。もちろん、お互いに謝罪もして。
随分長くなってしまいましたが、私、今日でおどりばを卒業したいと思います。
ずっと、どうしてずるずるとおどりばに留まってしまうのか、自分でも不思議でした。でもきっと、父との関係をなんとかできないこと、それが心に引っかかっていたのだと思います。
新型コロナウイルスのせいで、私は卒業式がありませんでした。
でも、父との関係がもとに戻ったことで、自分の子どものような頑固さを乗り越えたことで、なんだか今は、とても晴れ晴れとした気持ちでいます。
卒業式がなくなったことも、たくさんのお別れ会が中止になったことも、演劇の卒業公演がなくなったことも。どれも悲しかったけれど、強がりではなく、本当に、父とのこれとひきかえだったのだと思えば、なんてことはないな、と思います。新型コロナウイルスはたくさんの命を奪っている恐ろしいウイルスですし、感謝なんてできないけれど、私にこの機会を、このタイミングで与えてくださった神様には、感謝の気持ちでいっぱいです。
おどりばに住むことができて、おどりばの皆さんに出会うことができて、本当にうれしかった。これは、3月31日に書いています。明日から、私は社会人です。社会人になる前に、ここを卒業できたこと。とても素敵な思い出になりました。皆様、本当にお世話になりました。こちらは卒業してしまいますが、また機会がありましたら、ぜひ皆さまにお会いしたいです。ありがとうございました。
今までお疲れ様✨
しーちゃんの文章は、内容も、そして書き方からも、心に迫ってくるものがある。しーちゃんの文章には、色んなことを感じさせてもらいました!
ここで心のうちを吐露して書いたことそのものがしーちゃんにとって大きな得るものがあったんだろうなって思います。
さらなる飛躍を期待してます
またどっかでお会いしましょ❗